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神殿型展示と宗教・芸術の魅力(博物館展示論第1回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

第5室は全体が神殿のような構造をしており、テーマは芸術や芸能、宗教、信仰です。
画像を見ながら、この展示内容についてもう一度詳しく見ていきましょう。

ここでは「呪術」と呼ばれるものや、キリスト教、イスラム教、仏教、ヒンドゥー教といった大宗教が共存する形で展示されています。
展示手法の観点から見ると、単体展示、集合展示、構造展示など、さまざまな方式が混在しています。

また、この展示には「もので語る展示」と「ものに語らせる展示」の両方が見られます。
「もので語る展示」とは、構造展示を通して文化的背景を伝える展示のことを指します。
一方、「ものに語らせる展示」は、展示物そのものの価値を観覧者に見てもらうことを目的とした展示です。

具体例

  1. 神殿中央の展示
    神殿の中心部には、ニューギニアやメラネシアの木彫りや祖先像が展示されています。
    これらは単体展示に分類され、神殿の中心を占める重要な位置に配置されています。そのため、小規模ながら印象的な「小焦点展示」とも言えます。

  2. ニューギニアの集合展示
    ニューギニアの神像や仮面など、さまざまな資料が並べられた展示コーナーがあります。
    これは集合展示であり、比較展示とも言えます。資料の文化的背景を伝えつつ、一つ一つの造形の素晴らしさを楽しんでもらう意図があります。
    この場合、「ものに語らせる展示」としての役割も兼ねています。

  3. 宗教のコーナー
    宗教の展示エリアには、右側にチベット仏教、左奥にヒンドゥー教のコーナーがあります。
    チベット仏教の宗教用具などを展示し、その宗教全体を理解してもらう意図があります。
    この展示手法は「構造展示」となり、文化背景を伝える「もので語る展示」にも分類されます。

  4. ボリビアのカーニバル展示
    ボリビアのウォルロのカーニバルにおける「悪魔の踊り」の展示コーナーがあります。
    一見、似たような資料が並んでいるように見えますが、奥に異なるキャラクターが配置されています。
    全体的に「悪魔の踊り」というテーマを通して構造展示を行っており、文化の全体像を語る「もので語る展示」と言えます。


このように、第5室の展示は階層的なテーマ構成(大テーマ・中テーマ・小テーマ)を活用し、多様な展示方式で表現されています。それぞれの展示手法が、観覧者に深い理解を促しつつ、視覚的な興味を引き出すよう工夫されています。