F-nameのブログ

はてなダイアリーから移行し、更に独自ドメイン化しました。

縮小する国家:公共政策の現在・未来(公共政策第15回)

公共的問題も政府組織を冷静に見極める必要があるだろう。情報公開が進んでいるので昔に比べれば容易かもしれないけれど。

 

手塚洋輔。縮小する国家という観点で。先進国に共通する問題や将来の展望。政府の問題能力解決が抱える限界。期待も大きいが政府が出来ることや問題解決は従来と異なる。このことを踏まえて。
先進国に共通した問題。事態を十分社会が認識していないもの。少子高齢化、環境問題、グローバル化。
少子高齢化、日本では数十年前から。既に総人口は減り始めた。たとえ出生率が多少改善したとしても、妊娠可能な女性は急速に減っている。特に都市部。若者の流入が限界に達しつつ在る。団塊の世代が後期高齢者に。介護や医療のサービス供給が難しく。水道などのインフラも老朽化。維持管理にかなりのコストが。人の済む範囲を狭める動きも。住宅の余剰。ニュータウンの高齢化。空き家の問題。労働力の確保の問題。諸外国では移民の受け入れを積極的に。治安悪化などの負の問題。これまでの社会の前提が崩れ、新しい政策課題を。
環境問題。立場により意見が相違する。環境問題と経済成長の両立。原発の再稼働の問題。深刻な環境破壊を懸念。火力発電からの燃料の大気汚染。経済合理性についても。リスクの見積もりの対立となりやすい。起こりうる問題の大きさと発生確率を掛け合わせる。両方において相違が。リスクの受け入れは納得の社会。
グローバル化の影響。1つの国の課題が、国家単位の対処が難しくなる。規制の緩い国に多国籍企業は拠点を写す。租税回避。国際的協調が不可欠。枠組みが中立的ではない。内容による有利不利が。自国の利益を如何に図るかの熾烈な争い。政府の側も政府の非効率性が批判され、大きな政府から小さな政府に。福祉国家。隅々まで広く関与。財政的限界。ニューパブリックマネジメント。市場メカニズム。組織の細分化。成果による評価。政府が独占的に公共サービスを供給していた分野でも。民営化などの動きが。今度は経済効率ばかりが優先され、公平さの問題が。政策立案部門だけを残す改革。政府の責任か独立した執行機関の責任か。多様な主体を連携してネットワークを。ガバナンスという視点。リーマンショックやヨーロッパ経済危機で国家が大規模に市場に介入。日本でも20年以上破綻企業の国有化などが。不透明。財政支出の重要性。税収を上げることも低成長では難しい。国債も金融市場に影響される。政府への期待はあるが。
政府の問題解決能力の変化。政府に求められる。提供、分析など4つの側面。
提供する能力。税を徴収してそれを原資としてインフラの整備、治安、福祉サービス等の様々な公共サービスを。実際に遂行したのは警察官や福祉職員など。職員のレベルが高い必要性。腐敗が横行するのではなく。第一線職員。必ずしも役所の中だけでなく、専門性と裁量でもって仕事にあたる。働き如何が政府の能力を決める。第一線職員の環境の変化。主に正規の公務員から民間委託や非正規職員に。発注受注関係。正規の公務員と同じ裁量を認めるか問題に。業務の多くは政府の独占だったのが、サービスの提供主体が増えて受け手に選択肢が。質の違いが可視化。広く裁量が認められてきた職員の人事考課も変わる。交番のおまわりさんが巡回で何をしていたが把握は難しく裁量があった。GPSの装着。業務のやり方が変わる。良いことも副作用も。見極めが必要。
規制する能力。公共サービスと並んで重要。危険有害な行為を取り締まる。資格を限定する。許可制にする。限界。底辺への競争。グローバル化でできるだけ規制の少ない国に拠点を移す。税率を下げたり安全基準を下げたり。1国での対応に限界。民間との競争。社会が複雑になると規制も高度化を。担うことの出来る人材には限りが。民間企業との争奪。政府内に人材やノウハウが蓄積されづらい。自己規制させる仕組みが持つ問題。直接規制したり監視したりするのではなく、自己規律の仕方を。メタ規制。確かにコストを減らすことが出来るとされる。平常時には上手く作動する。本当に危機があると充分な抑止にならない。
調整する能力。分業をしてピラミッド型の官僚制組織を。合理的運営を。自ら所掌分野に切り取り組織目的に合うように政策立案を。様々な業界、異なる利害。不利益になるのに反対。社会の中の対立が政府の部局間の対立に。それを調整して社会の対立を抑える。複雑であればあるほど、多くの利害と担当部局が絡み合い調整が上手くいかない。どの組織が対応しない問題も。児童虐待防止のための地域協議会。子供への対応が漏れてしまい死亡に至ってしまうので、情報の共有を。他機関連携。幾つかが実践。
分析する能力。正確に情報を把握するのが不可欠。官僚達が担ってきた。従来はある程度の専門性と経験に裏付けられた操作観。エビデンスにも続く政策。独自の制約。政治による外在的制約。政策の最終決定をする政治家は証拠を求めているのではない。場合により証拠を使わなかったり拡張して使ったりすることも。行政組織にとっても証拠に忠実とは限らない。非難を浴びそうな問題には目をそらし歪曲したり無視したり。エビデンスを扱う部署と実行する部署を。BSEのリスク評価と政策の実行。大学などは分からないで済ませられるし、新しい知見で書き換えが。政策の為の。規制科学。期限があるので何らかの結論を出さなければならない。エビデンスがあると言っても暫定的結論をせざるを得ない。
現代政府が直面している問題。不確実性が。完全に予見できない。事故を完全に防ぐことはできないが、何もしない訳にはいかない。Controlが求められる。いくら政策を行っても100%の成功を保障しない。それが出来るとしても莫大な労力とコスト、時間が必要。反対に政府はどのように間違い、過誤を回避しようとしているか。不確実性が在る中で意思決定。2つの過誤。するべきでないのにした、作為過誤。するべきだったのにしなかった、不作為過誤。第一種の過誤。第二種の過誤。統計学では。これら作為過誤と不作為過誤を同時に回避することはできない。トレードオフ関係に。過誤回避のジレンマ。要するに過誤をゼロにはできないので、何をするにせよしないにせよ、非難の可能性を払拭できない。非常に不安定で脆弱な。非難を遮断する仕掛け。制度や組織といった政府の活動の安全を図るために。ある政策が安定的に運用されている。非難を遮断するメカニズムがある。両方の過誤をゼロにできないので、どちらを選ぶが焦点に。施行する方向を主たる過誤、従たる過誤。慎重に情報を収集して決定。可能性を重視する。少しでも可能性があれば即断実行。作為過誤を回避するか不作為過誤を回避するかで決定方法が大きく異なる。過誤回避のジレンマ。医薬品。児童虐待防止。主たる過誤の面積を小さく。主たる過誤を小さくする。従たる過誤についての遮断を。従たる過誤が広まっていない場合、情報の隠蔽や執行上のミスという形で。不可視化。しかし知られていては使えない。やむを得ないコストとする、技術的に困難。補償制度の創設など。希釈化手法。従たる過誤も回避可能とされる場合は?政府は回避する責務を負う。従たる過誤の面積を小さく。主たる過誤の可能性が高まる。政府の責任範囲を限定して。分散化。当事者の同意や申請を必要とする仕組みで。過誤が生じたら当事者の責任と出来る。当事者の決定を支援する側面。格差に繋がる。政策の評価は別。
公共政策が抱える問題と政府の能力の変容。間違えないのではなく、原理的に間違いをゼロにできない。政府に公共政策としての担い手として。失敗の原因の見極めが。責任を追究するだけでなく。様々な事例を参考に。原因に即して時に過誤を受容する構えが必要。困難な時代が続く。課せられた責務。

 

公共政策 (放送大学大学院教材)

公共政策 (放送大学大学院教材)