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フロイトとピアジェの発達理論に加え、エリクソンの心理社会的発達理論が大人の生涯発達を8段階で詳述し、個人成長のダイナミクスを解説しています。(発達心理学特論第1回)♯放送大学講義録

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フロイトもピアジェも、発達のそれぞれの時期に特徴的な状態があることを想定しており、それを「発達段階」と呼んでいます。ただし、フロイトであれピアジェであれ、それらの段階が大人になるという状態で、一つの最終的な状態として捉えられており、大人が一つのゴールとされています。しかし、人の発達は大人になることで完了するわけではありません。

成人以降の発達がどのようなものかを考える必要があります。成人期以降の発達も含め、それぞれの時期の発達課題を考えた人としてハヴィガーストがいます。ハヴィガーストの発達課題論は、1930年頃のアメリカでの理想的な市民の姿を想定したもので、人の発達を全体的に捉える、または人の発達として共通するものを捉えるというものではないという点で異なります。

このように考えると、人の生涯にわたる発達を考えたのがエリクソンです。エリクソンは、人の心理社会的発達に関する理論として知られています。エリクソンは、フロイトの性的発達段階論を基にしながらも、人が経験するさまざまな人間関係や社会との関わりを中心に、人の生涯を8つの段階に分けて、それぞれの発達時期に2つの状態があると考え、その理論を構築しました。

これらの8つの段階は乳児期に始まり、老年期までを含みます。フロイトやピアジェが完成段階と見なしていた青年期以降の発達も考慮されています。エリクソンの理論では、それぞれの時期に特有の2つの極端な状態が存在し、その中で葛藤を経験し、そうして人の発達が進むとされています。たとえば、乳児期の課題としては、基本的信頼と基本的不信があり、人に対する基本的な信頼感を築いていく時期と考えられます。

乳児期に、例えば身近なお母さんが、自分に対して不適切なことをすることなく、自分に求めているものに応じてくれることから、人を信じる力を獲得していきます。ただし、人を信じるとは、単に無条件で信じるということではなく、時には裏切られることもあります。お腹が空いてミルクを飲みたくて泣いているのに、時々お母さんが応じてくれないこともあります。それでも基本的には信じてよいと理解する中で、人に対する基本的な信頼が形成されていきます。