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ピアジェの発達段階理論を掘り下げ、感覚運動期から形式的操作期までの子供の認知発達プロセスを解説。認知心理学の基本を紹介。(発達心理学特論第1回)♯放送大学講義録

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もう1人の発達理論家として代表的なのがジャン・ピアジェです。

ピアジェはスイスのニューシャテルで生まれ、ジュネーブのルソー研究所で子供の知能あるいは思考の発達について研究をしてきました。ピアジェは、人が環境との関わりから知識を構築し、既に持っている認知構造の中に新しい情報を同化、取り入れることで理解を深めていくと考えました。これを発生的認識論と呼んでいます。認知発達に関するピアジェの理論は、段階論として知られており、感覚運動期、前操作期、具体的操作期、形式的操作期という4つの段階で考えられています。これらの段階は、人の認識世界が具体的なものから抽象的なものへと移行していく過程を示しています。

感覚運動期は、生まれてから最初の2年間を指します。ピアジェには3人の子供がおり、ジャクリーヌ、ルシエン、ローランの観察から「知能の誕生」という本を書きました。子供たちに様々な実験をしてみて、その反応を見て、これを本にまとめました。乳児期の子供は、見たり、聞いたり、触ったりする感覚や、掴んだり、落としたり、叩いたり、噛んだりする運動を通じて外の世界を知ります。

ピアジェは、外的な活動を通じて外の世界を知る時期が感覚運動期であると考えました。この期間中、子供は頭の中に物を思い浮かべることができず、例えば物が隠された場合、それが存在しないかのように振る舞います。しかし、物との関係を繰り返し経験することで、物の恒常性を理解するようになります。つまり、見えない時もその物が存在していることを学びます。

そして、見えないものの存在を心の中で思い描くことができるようになるのは、イメージや表象が形成されるためです。この能力が成立すると、次の段階である前操作期へと繋がります。前操作期は幼児期であり、この時期には心の中で外界の事象を処理する活動、つまり思考が発展します。子供は遅れ模倣や象徴遊びを通じて、目の前にないものでも心の中に再現できるようになります。

前操作期には言語が発達し、リンゴと言われた時にその物体が見えなくても、リンゴを思い浮かべることができます。この時期は、見かけに惑わされやすく、他人の視点を理解することが難しいため、自己中心的な考え方が支配的です。

次に、6歳から11歳の具体的操作期では、子供は具体的に理解できるものに対して論理的に考えることができるようになります。この時期には物の保存概念が成立し、形が変わってもその本質が変わらないことを理解します。この理解に基づき、異なる形の容器に同じ量の液体があっても、その量が変わっていないと理解することができます。

そして、形式的操作期では、具体的な現実から離れて抽象的に考え、仮説を立てて推論することができるようになります。この段階で、子供たちは多様な視点から物事を考える能力を獲得し、自己中心性から脱却します。