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地域の絆が犯罪リスクを減少!?🔍 生活リスクマネジメント第10回(その5) #放送大学講義録

被害者サイドのリスクの低減は必要だと思う。

 

-------講義録始め-------

 

犯罪不安に対する5つ目の要因は、近隣を含む地域社会における人間関係です。この人間関係のあり方が犯罪不安に大きな影響を及ぼしています。内閣府の治安に関する特別世論調査で、治安の悪化を感じている人が8割を超えるとの結果が出ています。この調査では、悪化の原因についても問われ、最も多くの人々が「地域社会の連帯意識の希薄化」を指摘しています。近隣や地域のつながりがない場合、人々は自らが犯罪への対処を単独で行わなければならない状況に直面します。このような状況は、リスクに対する制御が不可能であるとの認識を増幅させます。都会ではこの傾向が特に顕著です。逆に、地域の対人ネットワークが強ければ、防犯の対象資源が増大し、犯罪不安は減少します。この地域のつながりと犯罪不安の関係については、授業の最後に詳しく取り上げる予定です。

これまで、犯罪の様相やその認識について見てきましたが、次に犯罪の発生しやすい条件とその対処について考えていきます。犯罪が発生しやすい条件を理解することは、犯罪リスクの効果的な対処の大前提です。多くの学問分野で、犯罪の発生しやすい条件に関する研究が進められています。犯罪を構成する要素には、犯罪者、ターゲット、犯罪が行われる環境の3つがあります。これらの要素が組み合わさることで犯罪が発生します。それぞれの要素において、犯罪が発生しやすい条件やその防止策についての研究が行われています。

犯罪者に関しては、心理学や犯罪学が主にアプローチしており、性格や犯行動機などを研究しています。ターゲット、特に犯罪の弱者とされる子供や高齢者、女性に関しては、被害者となるリスクを低減する条件作りの研究が進められています。環境に関しては、工学や環境犯罪学、情報学などが研究を進めており、犯罪を防ぐための環境設計に関する知見が集められています。

環境に対する対策について考えると、犯罪者が犯罪を遂行しづらい状態を作ることが重要です。具体的には、犯罪遂行のコストが高い状態、逮捕リスクが高い状態、犯罪による得益が少ない状態、犯罪行為に対する罪悪感を持ちやすい状態の4つを作り出すことが求められます。これらの状態を実現するための対策として、物理的・社会的な手段を用い、それには個人、家庭、地域、専門機関の連携が不可欠です。犯罪者、ターゲット、環境の3つの要素に対する適切な対策を施すことで、犯罪の発生リスクを大きく低減することが期待されます。