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てんかん患者の生活と研究の深掘り✍️"(ヘルスリサーチの方法論第4回その1) #放送大学講義録

治療対象はあくまで人間であり病気ではないということだろう。

 

-------講義録始め--------

 

今日のテーマは健康や病、障害の研究デザインです。では早速始めましょう。今日の学習ポイントです。健康や病の研究のうち、人を対象とするものにおいては、患者など当事者そのものを念頭に置くことが多いですが、実際には家族や地域の人々などを対象とする研究も含まれます。ここでは、健康や病、障害の研究において対象をどう捉えるのかを考えていきます。調査研究におけるサンプリングなど、研究デザインの構築の仕方についても言及します。今日のキーワードは研究デザイン、研究計画、量的方法、質的方法です。

健康や病を対象にした研究では、対象とする最小の単位は一人の人、個人です。全体としての身体や人格、心などが備わった人として捉えます。病気の診断がついた人を患者と表現するのが一般的ですが、患者とは何らかの病気や怪我のために治療や看護を受けている人を意味します。患者の感という感じは病気、傷を意味しており、英語のペイシェントはペイシェンスという忍耐を語源とし、耐えている人という意味です。慢性疾患が主流の現代では、患者という視点でその人全体を考えるのには限界があります。てんかん患者を例に考えてみましょう。まず、てんかんという病気ですが、これはてんかん発作を主な症状とする脳神経疾患です。高転換薬の服用によって血中の薬物濃度を一定に保つことによって発作を抑制することができます。薬の調整がうまくいけばコントロール可能な疾患です。てんかん患者が服薬したり通院するなど患者としての役割をすることはその人の一部分です。その人の生活や人生は、患者であることだけでなく、家族の中での役割や社会生活の中での役割など、別の面が当然あります。また、てんかんは偏見や差別を受けやすい疾患であるため、その人がてんかん患者であることを知らない人に対しては、てかであることは隠されるかもしれません。隠しておいた方が、色々な煩わしさを回避しやすくなるかもしれません。しかし一方では、てんかん発作はいつ起きるかわからないということや、発作によって意識障害を生じて交通事故に遭ったり、あるいは反対に事故を起こしてしまう危険性があるなど、てんかんであることはその人の生活や人生全般に少なからぬ影響を与えています。そうした人を表現する時には、てんかん患者ではなく、てんかんを持つ人々、あるいはてんかんと共に生きる人々のように表現します。どのように表現するかによって、あることが見えやすくなったり、見えにくくなったりします。患者という見方は、その最たる例と言えるでしょう。