有用性が必要なことで法律学と近いかもしれない。
------講義録始め------
看護学、医療をはじめ、教育学や社会福祉学など、実践との緊張関係のある学問においては、研究や論説を評価する基準として、真理性とともに有用性が重視されます。具体的には、研究において、この分野の専門家の一人は、何々が明らかになったということに加えて、それらが明らかになったことの社会的意味、すなわち、問題の改善や解決、そのための政策や実践にとってどれほどの意味のあることなのかがしばしば問われると述べています。また、それは短期的な視点からのみではなく、長期的視点からも考えられる必要があります。したがって、研究を行う際には、問題の発見や同定、問題の改善や解決との緊張関係が重要となります。単なる研究者の興味や知的好奇心だけで研究をすることは難しいというのが健康や病を対象にした研究の特徴です。特に、医療、看護の領域では、研究計画の倫理審査の段階で、研究倫理に基づいて研究の社会的意義や学問的な意義があるのかどうかが諮問され、かつ、対象者が受けるリスクや身体的、精神的負担と研究成果による利益を比較して、研究成果による利益が大きいと判断できる場合に研究計画の倫理的な妥当性が認められます。したがって、研究の社会的意義を考慮せずに研究計画を考えるということは実質不可能です。また、社会福祉の領域では、人々の抱える問題には、歴史的なもの、宗教的なもの、人工的なもの、人種問題的なものなど多岐にわたる価値観を含んでいるため、客観的かつ中立的、平等的な問題解決や接近が求められます。問題解決志向の学問である以上、学問的使命として、研究成果を報告書としてまとめたり、学会での発表や論文や著書としてまとめたりして、研究の成果を公にし、社会に還元していくことが求められます。公になった研究成果が当事者や支援者、研究者の目に触れることによって、経験が共有されたり、知見が実践に取り入れられたり、別の研究者に追試されることによって、知見の蓋然性が高まることに貢献するからです。