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発達障害対応では個別特性を分析し、知的発達障害への理解、発達・知能検査、視覚情報提示、感情表現支援が重要。(精神疾患とその治療第11回)#放送大学講義録

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それでは、次に、個々の発達障害の概要と対応のコツについて触れていきたいと思います。対応は一般的です。ただし、先ほどからお話ししているように、対応や支援は診断名に基づいて行われるものではありません。すなわち、自閉スペクトラム症であればこういう対応がある、ADHDであればこういう対応があるという訳ではなく、診断名と一対一で支援が決まるわけではありません。繰り返しになりますが、1人の人間に複数の発達障害が存在することがあります。ですので、1人1人の人間の特性を分析して、日常生活で何に困っているか、医学的な用語では症状という言い方をしますが、それをスタート点として支援がなされます。診断はあくまで支援の手がかりであり、ヒントを与えるものでしかありません。

まず、知的発達障害についてです。これは昔は知的障害や精神遅滞という言い方をしていた状態です。年齢相当の知能が獲得されていない状態を知的障害、知的発達障害と言います。遅れに見合った環境設定をすることが対応の原則になります。

実際の年齢、すなわち暦年齢ではなく、発達の年齢に合わせた対応をしていきます。そして、発達の年齢が何歳ぐらいであるかを見るのが発達検査や知能検査です。例えば、4歳の子供で発達検査をして発達指数が70であったとします。これは、年齢の70%の発達段階であるということになります。すなわち、4歳で発達指数が70ということは、発達年齢は2.8歳、およそ3歳手前ぐらいの水準が適切ということになります。同様に、10歳の子供で知能指数が70であれば、約7歳ぐらいの知能レベルということになります。

そのように、年齢ではなく、発達年齢に合わせた対応をすることが、知的発達障害がある子供の対応の原則です。具体的には、耳から聞いただけでは理解できないことが多いため、目で見てわかるような視覚的な情報提示を必ず行います。

それから、話し手が複数いる場合、どこに注意を向けたらよいかわからなくなることがあります。授業では、先生1人だけが話しているわけではなく、周囲が騒がしい場合、どこに注意を向けるべきかわからなくなることがあります。また、理解が不十分なまま返事をすることもよくあります。ですので、大事なことを話している時は耳を傾けるように促し、言葉をできるだけ平易な表現で伝え、理解の度合いを確認します。1つ1つ丁寧に教えていくことが必要です。

理解だけでなく、表現にも課題があります。自分の気持ちや欲求を言葉で表現できないため、行動で示すことがあります。例えば、心配そうな表情、イライラした態度、乱暴な行動、落ち込んだ雰囲気など、普段と違う態度や行動があれば、周囲の大人がその気持ちを察してあげる必要があります。