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東横惠愛病院のケースカンファレンスでは、多職種協働で患者の生育歴を深掘りし、心理検査結果を活用して治療改善を図ります。(保健医療心理学特論第3回)♯放送大学講義録

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このテキストでは、東横惠愛病院で行われるケースカンファレンスの役割と、異なる専門職がどのようにこれに貢献しているかに焦点を当てています。

月に1回のケースカンファレンスは、通常の仕事が終わった後に1時間半から2時間かけて実施され、特定の患者について深く議論します。この時間は、その患者が直面している現在の問題だけでなく、その患者の一生や、その両親の結婚前の生活や両親自身の生育歴を含む、広範な背景についても議論されます。これにより、患者一人一人の背景を全体的に理解する努力がなされます。

このプロセスでは、スタッフは患者の人生全般を一緒に考える時間を持ち、これが治療の方向性に大きく影響します。例えば、行動や性格が問題とされがちな子どもであっても、その生育歴を紐解いていくことで、「この子はよくここまで生き抜いてきた」「この子の生きていること自体が奇跡に近い」といった新たな理解が得られ、スタッフの見方が変わることがあります。この新たな理解は、子ども自身にも伝わり、治療の転機となることがあります。

ケースカンファレンスで議論されるのは通常、特に困難を感じている患者ですが、カンファレンスを経ることで多くの患者が改善する傾向にあります。これは、スタッフ一人一人が患者に対する見方を変えることが多いからです。患者一人ひとりについて、約10人のスタッフが集まってじっくり考える時間は、精神科医療において非常に重要です。

カンファレンスでの議論には、通常、主治医が患者の生育歴や入院経過をまとめた情報を提供し、担当看護師が入院から現在に至るまでの看護の経過を報告します。また、心理検査が行われている場合はその結果についても議論され、場合によっては院内の訪問学級の教師なども参加します。これにより、多角的な視点から患者の状態が評価され、治療方針の調整が行われます。

ケースカンファレンスは、単に問題を解決する場ではなく、スタッフが患者やその家族の状況を新たな視点から捉え直す機会を提供し、治療に関わる全員が新たな気づきを得る場としても機能しています。これにより、より効果的な治療が可能となり、患者の長期的な福祉に貢献しています。