ーーーー講義録始めーーーー
成人の発達と学習について、これから15回の講義を行います。印刷教材の前書きには、イギリスのビクトリア朝時代の女性作家であるジョージ・エリオットの次の言葉を引用しました。
「なりたい自分になるのに遅すぎることはない。」
このエリオットの言葉は、自己実現に向けて学習を行っている皆さんを励ます言葉として受け取れると思います。私たちの人生には、嬉しいことや楽しいことばかりではなく、悲しいこと、辛いこと、苦しいことも多くあります。
しかし、そのような人生の中で、私たちがより良い人生を望み、自分の人生に前向きな働きかけを行おうとする時、その行動は学習活動へとつながると言われています。イギリスの成人教育の研究者であるピーター・ジャービスは、「生涯学習は人間の成長と発展にとって不可欠なもの」と述べています。成長し、発展することを望み、前に一歩踏み出す時、私たちは必ず学習を伴う行動を取るのです。
本講義では、成人になってから学習を行っている皆さんに、成人学習に関する研究を紹介することで、学習活動の本質を理解し、自分がなぜ学習しているのか、その意義を考えるきっかけを提供したいと考えています。今回を含め、15回にわたる講義になりますが、どうかよろしくお願いいたします。
これからの15回の講義がどのような内容になるか、簡単にご紹介します。この講義は、まず「学習のプロセス」に関する内容、次に「成人学習理論の紹介」、そして最後に「学習の実践」という3つの柱から構成されます。
学習のプロセスでは、生物学的変化である加齢、すなわちエイジングが学習にどのような影響を与えるのか、人生における心理的発達、記憶のメカニズム、動機づけ、経験の意義などについて扱います。
次に、成人学習理論では、代表的なものとして、アンドラゴジー(成人教育学)、自己決定理論、変容的学習、ナラティブ学習、身体化された学習といった理論を紹介します。これらは皆さんにとって馴染みのない理論かもしれませんが、どのような内容か想像し、興味を持っていただければと思います。
最後に、学習の実践では、皆さんにとって身近な個人と組織、人や地域とのつながり、そしてキャリアに関わる学習についても考えていきます。