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親子関係の理解にはハーロー実験が重要。精神分析論と学習理論を超え、接触慰安と安全基地の概念がキーとなる。(発達心理学特論第6回)♯放送大学講義録

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ただ、授乳を通じた親子関係という説明だけで本当に親子の絆を完全に説明できるのかという疑問があります。人間も動物の一種です。そこで、動物を対象とした研究から親子関係の形成に関する重要な見解が2つ出されました。

1つ目は、赤毛ザルの親子の分離実験によるハーローの研究です。この研究は代理母親実験として知られており、母親から分離された小猿に2種類の代理母親が用意されました。一つは金属製の針金で作られた母親で、哺乳瓶が付いており、ミルクを与えることができます。もう一つは、体が布でできている触感の良い布製の母親です。

もし精神分析論や学習理論による親子関係の説明が正しいならば、小猿は針金製の母親と密接な関係を築くと予測されますが、実験の結果はそうではありませんでした。どちらの母親と関係を築いているかは、小猿が不安や恐怖を感じた時にどちらの母親を求めるかで判断されました。小猿は、脅威を感じた際に布製の母親にしがみつく行動をとることが観察されました。これによりハーローは接触による慰安が重要であると結論づけました。

ただし、この結果については、猿は親の手を掴む習性があるためにこのような結果となったのであって、人間の場合は異なる可能性があるという批判もありました。そうした動物の本能とは別に、安心の拠り所としての「安全基地」という概念がその後の親子関係の理論にとって重要なものとなりました。