ーーーー講義録始めーーーー
質問者:「先生、ここに書かれている 'Δt' っていうのが消えてしまったんですが、これはどうやって計算されたんでしょうか?」
先生:「良い質問ですね。これは 't' と 't + Δt' の差、つまり 't + Δt' から 't' を引いているんです。そうすると、時間の変化が 'Δt' だけになります。この間に位置がこれだけ変わりました、というのが変化の割合ですね。」
質問者:「なるほど、そういうことなんですね。」
先生:「そうなんです。では、ここで重要な点が出てきます。先ほども話に出た '瞬間' をどう捉えるかという点です。瞬間というのは、この時間の幅 'Δt' を可能な限り小さくしていくという考え方です。」
質問者:「具体的にはどれくらい小さくですか? 1秒? 0.1秒? それとも0.001秒でしょうか?」
先生:「良い指摘です。ここで数学の強みが発揮されます。『限りなくゼロに近づける』という数学の考え方、つまりリミット(limit)という概念を使います。このリミットをかけることで 'Δt' を限りなくゼロに近づけていきます。」
質問者:「では、時間の幅がゼロに近づいたとき、何が残るのでしょうか?すべてがゼロになってしまいそうですが。」
先生:「実際に 'Δt' がゼロになると、分母と分子がともにゼロになりますが、ここで特殊な計算が出てきます。この状態は '0/0' という表記になりますが、数学ではこれがゼロにならず、ある有限の値が得られるように工夫されているんです。」
質問者:「そうなんですね。」
先生:「こうしてリミットの概念を使うのですが、毎回この表記を使うのは面倒です。そこで、数学ではこの変化を 'dx/dt' という記号で表します。これは 'xをtで微分した値'、あるいは 'tによる導関数' と言います。」
質問者:「それが瞬間の速度になるんですね。」
先生:「はい、物理ではこの速度を 'v' と表記し、英語の 'velocity' の頭文字から来ています。これは '瞬間瞬間の速度' を表すので、時刻 't' が定まればその瞬間の速度が 'v' で表されることになります。 'Δt' はもうゼロに縮めているので登場しません。」
質問者:「では、特定の時刻 't' における瞬間速度をこうやって書けるということですね。」
先生:「そうです。全ての項がイコールで結ばれるこのロジックで計算が非常にシンプルになります。もしこの書き方が少しでも理解しやすく感じられたなら、それはもう大成功ですね。ここで数学の強みが発揮されるわけです。」