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後継者問題と相続税の課題と対策(人生100年時代の家族と法第13回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

インタビュアー:では、次の2つ目の問題として、後継者問題についてお話しします。具体的には、どのような問題があるのでしょうか?

福崎先生:そうですね、後継者問題について、実際にご相談いただく中で見えてくるのは、まずお子様がいらっしゃらないケースでは、親族内に後継者がいないという問題です。お子様がいる場合でも、後継者になりにくいケースが多く見受けられます。それは、先ほど述べたように税負担の問題が大きく影響しており、たとえば、すでに他の企業に勤めているお子様に対して、そのキャリアを諦めて家業を継いでほしいと頼むことが難しいのです。

お子様が順調に自分の道を進んでいる中で、「家業を継いでほしい、しかも継ぐ際には5000万円の相続税を支払ってほしい」と親がお願いできるかというと、非常に難しい問題ですよね。こうした税負担の問題もあり、親も躊躇してしまうケースが多いです。

さらに重要なのは、後継者になるということは、単に株を引き継ぐだけではないという点です。従業員を管理し、雇用を維持し、事業を発展させるためのマネジメント能力やモチベーション、人間的な魅力も求められます。これらの要件を満たす後継者を見つけることが難しいため、後継者問題は根深いのです。

インタビュアー:確かに、非常に難しい問題ですね。では、次に3つ目の相続問題についてお話しします。これはどのような問題でしょうか?

福崎先生:中小企業の経営者の財産内容を確認すると、会社の株式が占める割合が非常に高いことがわかります。会社の業績が良ければ良いほど、その割合が高くなります。具体的には、経営者の総資産のうち、株式の占める割合が7割や8割に達するケースも珍しくありません。

こうした株式を長男に後継者として全て譲ると、他の兄弟の取り分がどうなるのかという問題が生じます。つまり、後継者以外の相続人の権利が侵害される恐れがあるのです。ですから、事業承継を進める際には、税負担をクリアし、納税できる環境を整えることが重要です。さらに、後継者として事業を引き継ぐためのモチベーションやスキルも必要です。

加えて、家庭内での相続問題、特に兄弟間での相続争いを解決しない限り、円滑な事業承継は難しいのです。

インタビュアー:どうもありがとうございます。

最後に、家族と税にまつわる社会的な問題について考えてみたいと思います。相続はどの家庭にも起こることであり、親が亡くなった際に相続税がどのくらいかかるのか、また相続税の節税対策に関心を持つ方も多いでしょう。実際、平成27年1月1日からの相続税法の改正によって、相続税が増税されたと話題になりました。

国税庁が公表した資料によると、相続財産の総額は2011年(平成23年)に11兆7000億円でしたが、2020年(令和2年)には17兆4000億円に増加しています。相続税の額は2011年に1兆3000億円、2020年には2兆1000億円と、約10年で2倍近く増加しています。

このように、家族や中小企業を取り巻く状況に応じて、法律や税法は改正されることがあります。皆さんも、家族内で相続に関する問題が生じた際には、民法や税法の改正による制度の変更がないか、ぜひ確認してみてください。