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さて、第1回のテーマは次の3つです。「家族と法の関係」「民法の歴史」「民法における家族に関する基本的な概念」です。ここからは、1つ目のテーマである「家族と法の関係」についてお話しします。
家族に関わる法律は多岐にわたります。たとえば、最高法規である日本国憲法第24条第2項は、「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚ならびに婚姻及びその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならない」と定めています。
家族は社会構成の基本単位であるため、家族に関わる法律は多数存在します。ここでは、全15回の講義の構成と、この講義で具体的に取り上げる法律を紹介します。講義の詳細はシラバスをご覧ください。
まず、「民法」は1898年(明治31年)に施行された、120年以上の歴史を持つ法律です。そして、家族に関する最も基本的な法律が民法です。民法は、家族の範囲(これを親族と言います)を定めるとともに、親と子、夫婦など家族間の法律上の権利や義務を定める法律です。そのため、この講義全15回のうちのほぼ3分の2が民法に関する内容となります。
次に、「手続法」とは、裁判所で裁判手続きを行うための法律のことです。具体的には、民事訴訟法や刑事訴訟法などが含まれます。家族間の法的な紛争も、最終的には裁判所による裁判で解決されることになります。家族間の紛争には、他の紛争とは異なる特殊な側面があり、その特殊性を踏まえた各種の裁判手続きが用意されています。手続法については、第14回目の講義で取り上げます。
続いて、「社会法」とは、自由主義経済や自由競争が生み出す不平等や貧困などの社会問題を解決するための法制度を指します。労働分野、社会保障分野、社会福祉分野の法制度が社会法に該当します。困窮や困難を抱えた国民、ひいては家族を保護・支援するための法分野が社会法であり、家族の形成、維持、保護、支援に深く関わっています。社会法については、第7回から第9回の講義で3回にわたって取り上げます。
最後に、「税法」とは、所得税、消費税、相続税など各種の税の根拠となる法制度のことです。日本国憲法第30条は、納税を国民の義務の1つと定めています。国民や企業から集められた税金や社会保険料を原資として、先ほどの社会法が定める生活保護や年金といった金銭的な給付が国民、ひいては家族に支給されます。少子高齢化が進行する現在の日本社会では、社会保障のための支出と国民の負担のバランスが重要な問題になっています。税法については、第13回目の講義で取り上げます。
以上の「民法」「手続法」「社会法」「税法」は、それぞれ異なる法分野ですが、家族という観点から見ると、社会的な機能としては相互に密接に関連していると言えます。さて、皆さんがこの講義を受講するにあたり、1つアドバイスがあります。法律は条文によって成り立っており、法律の学習とは条文の学習とほぼ同義です。この講義で法律の条文が出てきた場合には、その条文をインターネットで検索して読んでみてください。