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家事事件増加と相続・離婚の現状(人生100年時代の家族と法第1回)#放送大学講義録

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家族間の法的な紛争に関して興味深いデータがありますので、紹介します。最高裁判所は毎年、全国の裁判所が受け付けた事件の総数とその内訳についてデータを公表しています。事件は5種類に分類されています。

金銭に関するトラブルなどの「民事事件」、国などを相手にする「行政事件」、殺人や窃盗などの「刑事事件」、そして離婚や相続など家族に関する「家事事件」、少年犯罪を対象とする「少年事件」の5つです。まず、近年になって事件の総数が大幅に減少していることがわかります。裁判所に申し立てられた事件は、2000年から2020年の20年間で約40パーセントも減少しました。

裁判に関する報道は日々行われているため、私たちは紛争が多く、裁判になる事件が頻繁に起きていると考えがちです。しかし、実態は異なります。そして、裁判全体の件数が大幅に減少しているにもかかわらず、家族に関する「家事事件」だけが突出して増加しています。2000年から2020年の20年間でほぼ2倍になりました。現在、全国の裁判所が取り扱う事件の約3分の1が家族に関する事件です。

なぜ「家事事件」だけが増えているのでしょうか。そこで、別の統計を見てみましょう。厚生労働省が毎年公表している「人口動態統計」は、出生、死亡、婚姻、離婚など、家族に関する最も基本的なデータを提供しています。この統計の2000年と2020年のデータを見てみましょう。家事事件の代表的なものは離婚と相続です。

離婚については、20年間でそれほど減少していないことがわかります。一方、相続については、死亡する人の数が増加しているため、相続に関する紛争が増えていることが推測されます。死亡者数は2030年には年間160万人程度になると予測されており、これに伴い相続に関する紛争が増加し、今後も「家事事件」の増加傾向が続くものと思われます。