-----講義録始め------
講義を始めるにあたって、まず、働き方の変化について確認します。
第2次世界大戦後、高度経済成長を迎えた日本では、次第に男女間の性別役割分業が一般的になりました。世帯主である男性が外で働き、それを家庭で女性が支える「片働き」の世帯が多数を占め、結婚や出産を機に仕事を辞める女性も非常に多かったと言えます。
実際、この図は1980年以降の男性雇用者と無職の妻からなる世帯、すなわち「片働き世帯」と「共働き世帯」の数の推移を示していますが、1980年には片働き世帯が多かったことがわかります。
しかし、その後、次第に女性の就労率は上がっていきました。そして、この図が示す通り、1997年以降は共働き世帯の数が片働き世帯の数を上回ることとなり、2021年現在、大多数のカップルが共働きという状況になっています。
近年では、結婚や出産というライフイベントを迎えた後も共働きを選択するカップルが圧倒的に多くなっています。このような状況の中で、労働政策においては、性別に基づく差別の禁止や仕事と生活の調和、すなわちワークライフバランスの実現が重要な政策課題となっています。
前者については、特に男女雇用機会均等法が重要な役割を果たしています。また、後者については、多くの制度が関わりますが、例えば労働契約法において、労働契約は、労働者および使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、または変更すべきものとする旨が規定されています。
人生100年時代を迎える中で、従来に比べて就労期間も長くなってきています。性別に関わりなく、家庭生活との調和を図りながら長くなりつつある就労期間を過ごすことは、私たち一人一人にとって大切なことです。その実現の一助となるよう、以降で関連する労働政策を紹介していきます。