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男女雇用機会均等法の概要と課題(人生100年時代の家族と法第7回)#放送大学講義録

-----講義録始め------

 

まず1つ目は、男女雇用機会均等法です。以降、均等法と言いますが、均等法は1979年に国連総会で採択された女子差別撤廃条約の影響を受けて、1985年に女性に対する差別、すなわち性別差別を禁止する法として誕生しました。

1985年の制定当初は、事業主に対して「~するよう努めなければならない」という努力義務を課す規定が多かった均等法ですが、数度の改正を経て、2007年4月以降は、事業主に対する法的義務として、性別に基づく差別を禁止する法となっています。すなわち、2007年4月以降の均等法は、母性保護の局面を除いて、法的義務として女性差別も男性差別も禁止する法律となっています。

均等法は、募集・採用の場面と採用後の場面に分けて規定を置いています。まず、事業主は、募集・採用に際して、性別に関わりなく均等な機会を求職者に対して与えなければならないとされています。そして、採用後は、労働者の配置や昇進、降格、教育訓練、住宅資金の貸付けその他これに準ずる福利厚生の措置、労働者の職種および雇用形態の変更、退職の勧奨、定年および解雇、並びに労働契約の更新について、性別を理由として差別的取り扱いをしてはならないと規定しています。つまり、採用後の労働条件について、性別を理由とする差別的取り扱いをしてはならないということが定められています。

なお、これらの規定は性別に基づく直接差別を禁止するものとされていますが、均等法は、間接差別、すなわち、中立的な基準による区別に見えるものの、その基準を用いると差別的な結果が生じるものについても、一定の範囲で禁止しています。すなわち、合理的理由がないにもかかわらず、募集・採用に当たり一定の身長や体重、体力を要件とすること、募集・採用、昇進、職種の変更に当たり、住居の移転を伴う配置転換に応じることを要件とすること、昇進に当たり別の事業所への配置転換の経験があることを要件とすること、この3つを間接差別に該当するとして禁止しています。事業主が守るべき規範を明確にする観点から、この3つについてのみ間接差別として禁止されています。

ただし、このように限定が付されているのは日本の状況であり、諸外国では広く間接差別一般を禁止する例も見られます。間接差別一般を禁止するか否かは、今後の日本における検討課題と言えるでしょう。

ところで、均等法は性別を理由とする差別を禁止する法であり、性中立的な性格を有しますが、女性労働者のみを対象とする規定も残されています。具体的には、均等法は、婚姻、妊娠、出産、産前・産後休業の取得等を理由とする女性労働者に対する不利益取り扱い、例えば解雇や人事考課での不利益な評価等を禁止しています。また、妊娠・出産したことや産前・産後休業を取得したこと等に関する言動により、女性労働者の就業環境が害されることがないよう、雇用管理上必要な措置、いわゆるマタニティハラスメント防止策を講じることを事業主に義務付けています。

妊娠や出産を理由とするマタニティハラスメントは、近年大きな社会問題にもなっています。事業主は、マタニティハラスメント防止措置を取ることで、女性労働者が働きやすい環境を整えることが求められています。なお、このほか、事業主は、性別に関わらず、職場における性的な言動により労働者の就業環境が害されることのないよう、セクシャルハラスメント防止措置を講じることも均等法によって義務付けられています。