-----講義録始め------
さて、ワークライフバランスを保ちながら、「人生100年時代」とも言われる長い人生を歩んでいくことは、多くの方にとって重要な課題と言えます。男女雇用機会均等法による性差別禁止や労働基準法による労働時間規制、育児・介護休業法が定める各種の制度は、労働者が性差別を受けることなくワークライフバランスを保つための重要な法制度です。
ただし、今日の講義や配布資料では十分に扱うことができなかった関連する重要なテーマもあります。例えば、非正規雇用の問題に触れていませんが、これも重要です。かつては非正規雇用で働く方の中に女性が多かったことから、この問題は女性労働者に関わる問題でもありました。
今日の授業の冒頭で、専業主婦のカップルが減り、共働きのカップルが増えていることに触れましたが、共働きと言っても多くの女性が非正規雇用で働いているという現状があります。男性が主な稼ぎ手、女性が家計を補助するという状況が多く見られました。しかし、現在では男性の非正規雇用労働者も増えています。そのような状況の中で、性別に関わらず、すべての労働者に関わる問題として、非正規雇用労働者の処遇に関する問題を捉える必要があります。
また、今日の講義や配布資料で取り上げたさまざまな制度、例えば育児・介護休業制度などを利用できるのは、雇用されて働いている労働者です。最近ではフリーランスで働く方も増えていますが、こうした働き方をしている方々は、雇用されて働く労働者であれば受けられる労働法の保護を受けられず、非常に不安定な条件のもとで働かざるを得ないという問題が社会的に認識されつつあります。
これら2つの問題について、東京大学社会科学研究所の水町勇一郎教授からお話を伺いたいと思います。