労働経済は企業活動の肝であると言える。
-----講義録始め-----
「経済学入門第12回」の講義では、新古典派の理論を基に、労働力と生産要素についての洞察が提供されています。労働力は生産要素の一つであり、派生的な労働需要と流動的な生産要素として認識されています。
この視点から、長期雇用契約は固定的な生産要素としての性格を持ちます。企業は継続して安定した労働要素を求め、コアとなる労働力は正規雇用者として扱われます。これが日本的な経営の特徴であり、終身雇用制度と年功賃金という形で表れます。
人的資本投資は、労働価値を高める方法として認識されます。一般的な人的資本投資は教育投資であり、個々の労働者が自己負担で行います。一方、特殊な人的資本投資は、企業固有の技能や知識の開発に関連し、OJT(On-the-Job Training)とOffJT(Off-the-Job Training)の形で行われます。これらの投資は労働の生産性を引き上げ、年功序列によって労働者の職階が引き上げられます。
日本型雇用の長所は、不況時にも労使協調により雇用が保護されることです。これは松下幸之助が世界恐慌時に一人も解雇せず、給料を維持した事例や、週休二日制の早期導入といった歴史的な事例を通じて示されています。
しかし、バブル経済の崩壊により日本的雇用は危機に立たされました。閉鎖的な市場から流動的で競争的な市場への移行により、人件費が固定費用となり、企業は即戦力を引き抜くことや非正規労働者の増加を促す結果となりました。特に2010年には非正規労働者の比率が35%に達し、景気が拡大しても失業率は下がらないという問題が生じました。
最後にリストラされた正規雇用者や非正規労働者の扱いについても触れられています。長期的に見ればリストラは企業にとってマイナスであり、特に残された労働者の士気を下げるとの指摘があります。また、ワークシェアリングや女性労働者の活用についても検討が必要とされています。女性労働者の活用に関しては、まだ余地があり、育児と仕事を両立できる環境を提供することが求められています。