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介護休業制度とハラスメント防止策(人生100年時代の家族と法第7回)#放送大学講義録

-----講義録始め------

 

育児休業に加えて、1995年には介護休業の制度も導入されました。これは、要介護状態にある対象家族を介護する労働者が、対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として取得できるものです。対象家族には、配偶者(事実婚も含む)、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、そして配偶者の父母が含まれます。

この期間中も雇用保険から休業開始時賃金日額の67パーセントが介護休業給付として支給されます。なお、介護はいつまで続くか予測が難しい側面があるにも関わらず、取得できる期間が通算93日までとなっているのは、この間に介護保険の利用などにより介護を行う体制を整えることを念頭に置いているためです。

高齢化が進展する中で、介護離職の防止も大きな政策課題となっていますが、こうした制度を利用して、家族の介護が必要となった際に、これを理由に離職を余儀なくされる労働者を減らすことが介護休業制度の目的の一つです。

さらに、育児・介護休業法は、育児休業や介護休業を取得したことに対する不利益取り扱いの禁止を定めています。また、労働者が育児・介護休業に関してハラスメントについて事業主に相談したことを理由とする不利益取り扱いも禁止されています。

さらに、事業主には、育児休業や介護休業の利用に関する言動によって労働者の就業環境が害されないよう、雇用管理上必要な措置、いわゆる「マタニティハラスメント」や「パワーハラスメント」の防止策を講じることが義務付けられています。

妊娠・出産に対する不利益取り扱いやハラスメント防止策については男女雇用機会均等法が規定していますが、均等法の規定は女性労働者を念頭に置いたものです。それに対して、育児・介護休業法は性別を問わず、育児・介護休業の制度利用に対する不利益取り扱いやハラスメントを禁止しています。

また、育児・介護休業法は、事業主に対して労働者の配置に関する配慮を行うことも義務付けています。すなわち、事業主は就業場所の変更を伴う配置転換において、就業場所の変更により、就業しつつ子供の養育や家族の介護を行うことが困難となる労働者がいる場合、その子供の養育や家族の介護の状況に配慮しなければなりません。

日本の企業では、特に職務内容や勤務地を限定しない形で労働契約を締結した労働者に対して、転居を伴う配置転換が命じられることがしばしばありますが、こうした配慮を行うことが事業主には求められるようになっています。