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育児・介護休業制度の概要と改正点(人生100年時代の家族と法第7回)#放送大学講義録

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このように、働く時間への配慮がなされていますが、育児や家族の介護を行うにあたっては、労働時間への配慮を受けるだけでは不十分な場合もあります。そこで、労働者が雇用を維持しつつ休業できる仕組みとして、育児・介護休業制度が導入されています。育児や介護を契機とする離職はもちろん存在しますが、育児・介護休業制度が存在することで、労働者は雇用を失うことなく一定の期間、育児や介護に専念することが可能となっています。

続いて、3つ目のテーマとして、育児・介護休業制度について見ていきたいと思います。まず、育児休業は1991年に創設された制度で、原則として子供が1歳になるまで取得できるものです。保育園等に入れないなどの事情がある場合には、最長2歳まで延長が可能とされています。また、両親ともに育児休業を取得する場合は、子供が1歳2ヶ月になるまで取得することができます。

なお、出産する女性は、労働基準法に基づいて産前・産後休業を取ります。女性の育児休業は産後休業終了後に始まりますが、この産前・産後休業中は、その間の所得補償として健康保険から出産手当金が支払われることとなっています。

対して、育児休業期間中は、雇用保険から育児休業給付が支給されることとなっており、これによりその間の所得補償が行われます。給付される額は、2022年現在、最初の6ヶ月間は1日につき休業開始時賃金日額の67パーセントであり、6ヶ月を経過すると同日額の50パーセントとなります。雇用保険から給付がなされるのは、この制度が労働者の雇用継続を目指すものであるからです。

なお、育児休業に関しては、男性の取得率の低さに鑑みて、近年、父親の育児休業取得を促すための仕組みが設けられています。例えば、2009年の改正では、父親も母親も育児休業を取得する場合、取得できる育児休業期間を子供が1歳2ヶ月になるまでとする「パパママ育休プラス」という仕組みが導入されました。また、2021年の改正では、出生時育児休業、通称「産後パパ育休」と呼ばれる仕組みが導入され、2022年10月から施行されています。

これは、子供の出産後8週間以内、すなわち、女性が産後休業中に父親が4週間まで取得することが可能な休業で、2回に分けて取得することもできるものです。そして、この間も、雇用保険から出生時育児休業給付が支給されることとなっています。その額は、休業開始時賃金日額の67パーセントで、最初の6ヶ月までの育児休業給付と同様です。さらに、産後パパ育休中は、労使協定が締結されていることが必要ですが、労働者が合意した範囲で就労することも可能とされています。こうした対応により、男性がより柔軟に育休を取れるようにすることが目指されています。