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事業承継と後継者選びの重要性(人生100年時代の家族と法第13回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

では、事業承継において誰に事業を引き継がせるかについて見ていきましょう。

事業承継は、誰が引き継ぐかによって3つに分類されます。それは、親族内承継、親族外承継、M&Aの3つです。まず、親族内承継とは、経営者の子や配偶者などの親族に引き継がせる場合を指します。次に、親族外承継とは、会社の従業員や役員の中で、会社のことをよく知っていて、経営能力のある者に引き継がせる場合です。会社の内部から後継者を選びますが、親族ではない者に承継させるため、これを親族外承継といいます。そして、M&Aとは、会社の外部の第三者に事業を引き継がせる場合を指します。例えば、他の会社と自分の会社を合併したり、自分の会社の事業を買い取ってもらったり、事業を始めたいという希望者に会社を譲渡したりすることがこれに該当します。

このうち、1つ目の親族内承継では、家族間で財産が移転する場合があります。

会社にもさまざまな種類がありますが、日本の企業の大部分は株式会社ですので、ここからは株式会社を例にお話しします。株式会社は、会社に出資した者に株式を発行し、株式を保有する者が株主となります。株主には、配当を受け取る権利や、株主総会で議決権を行使する権利があります。

株式には種類があり、議決権のある株式とない株式がありますが、ここでは議決権のある株式を前提に話を進めます。株主総会では、会社の重要な事項が決議され、その中には取締役の選任および解任も含まれます。取締役は会社の業務を決定し、執行する者であり、会社の経営を担う存在です。株主は、株主総会で議決権の過半数の賛成により取締役を選任したり、解任することができます。

そのため、会社の経営においては、議決権の過半数を持つことが非常に重要です。取締役の集まりである取締役会では、会社の代表である代表取締役を選任します。代表取締役は一般的には社長と呼ばれます。したがって、株式会社においては、取締役を選任できる権利を持つ株主が誰かということが極めて重要です。

株式は財産の一部ですので、株主は自分が保有する株式を生前に贈与したり、遺言で相続させることができます。また、株主が死亡すると、その保有していた株式は相続財産となり、遺産分割により相続人が株式を受け取ります。遺産分割の際、会社経営に関心のない相続人が株式を取得することも起こり得ます。

このような性質があるため、事業承継においては、後継者が取締役として安心して会社経営を行えるように、株式をどのように承継させるかが重要となります。なお、会社の根幹に関わる事項、例えば定款の変更や合併などは、株主総会の特別決議が必要です。特別決議は議決権の3分の2の賛成が必要であり、後継者に3分の2以上の議決権を持たせると、経営がより安定します。

また、例えば会社の本社の土地や建物を代表取締役が個人で所有しており、会社に賃貸している場合、その土地や建物も財産の一部です。このような財産も株式と同様に、誰に渡すのかが会社の安定した経営に影響を与えることがあります。