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労働者の私的自由と職場の身だしなみ基準の衝突、髪型と髭の規則の合理的制約に関する裁判例を解説。(雇用社会と法第4回)#放送大学講義録

-----講義録始め------

 
もう1つは、労働者の私的自由に関する論点があります。男性職員の髪型、髭を禁止とする規律が有効であるかどうかが争われた事案として、郵便事業身だしなみ基準事件があります。これは、髪型と髭を一律に禁止というルールを設定したという事案です。これを守らず、髪型と髭で勤めていた男性職員に対して、人事評価においてマイナス評価とし、賃金カット等の不利益を受けたとして、不法行為に基づく損害賠償を求めたというのがこの事案になります。大阪高裁は、請求を一部認め、次のように述べています。使用者が事業の円滑な遂行上必要かつ合理的な範囲内で身だしなみについて制約を加えることは、例えば、労働災害防止のため作業服やヘルメットの着用を義務付けたり、衛生確保のため髪を短くしたり爪を整えることを義務付けたりすることは許されると述べています。ただし、労働者の服装や髪型等の身だしなみは、元々は労働者個人が自己の概観をいかに表現するかという労働者の個人的自由に属する事柄であり、また、髪型や髭に関する職務上の規律は義務関係または労働契約の拘束を離れた私生活にも及ぶものであることから、こうした規律は事業の遂行上の必要性が認められ、その具体的な制限の内容が労働者の利益や自由を過度に制約しない合理的な内容の限度で拘束力を認められると述べています。本件では、一律に禁止するのは合理的な制限であるとは認められず、こうした基準は顧客に不快感を与えるような髪型及び髭は不可とするとの内容に限定して適用されるとして、この労働者は、髪型の髭も整えられているとして、基準が禁止する男性の髪型及び髭に該当しないとして判断がなされました。

皆さんの中にも、髪型や服装をアルバイト先で指定されたり整えたりするといった指導がされたことがあるという人も多いと思います。こうした身だしなみに関するルールについて厳しく制約することは許されると思うでしょうか。この点を皆さんに考えてほしいと思います。