F-nameのブログ

はてなダイアリーから移行し、更に独自ドメイン化しました。

職務専念義務に関する最高裁判決と、政治プレート着用問題、勤務中の私用メールやスマホ利用の合理的限度を解説。(雇用社会と法第4回)#放送大学講義録

-----講義録始め------

 

次に、職務専念義務についても簡単に確認していきましょう。

労働者の職務専念義務とは、労務提供の際に仕事に集中することが求められるというものです。最高裁の昭和52年12月13日判決である目黒電報電話局事件では、就業中に政治プレート着用行為が職務専念義務に違反するとして争われました。

ここでは、職務専念義務として次のように述べられています。最高裁は、勤務時間及び職務上の注意力の全てをその職務遂行のために用い、職務にのみ従事しなければならないとして、プレート着用は職務専念義務に違反すると判断しています。

これが職務専念義務に関する最高裁判決の一般論ですが、この考え方は学説において厳しすぎると言われています。なぜなら、精神的活動の面から見ても、注意力を全て職務遂行に向けることは現実的には不可能であるからです。少し注意力を逸らしただけで職務専念義務違反として処分の対象になるのは、厳しすぎると考えられます。この点、大津事件においても、伊藤裁判官が補足意見でこのような考え方を示しています。

また、最近では、勤務時間中の私用メールやスマホの利用も問題になっています。これも形式的には職務専念義務違反と考えられるところですが、勤務時間中の私用メールが問題となった裁判例においては、職務遂行の妨げとならず、会社の経済的負担も極めて軽微な場合は、必要かつ合理的な限度内で社会通念上許容されると判断しています。