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懲戒事由には経歴詐称、職務上の非行為、業務命令違反、職場規律違反、私生活上の不行為、内部告発が含まれます。(雇用社会と法第4回)#放送大学講義録

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次に、具体的な懲戒事由についても見ていきましょう。ここでは、典型的な6つの懲戒事由について紹介しています。

詳細は印刷教材で確認してもらえればと思います。1つ目は、経歴詐称です。経歴を偽ることも懲戒処分の対象になります。経歴を高く偽ることも、経歴を低く偽ることも懲戒処分に当たるというのが最高裁の立場です。

2番目は、職務上の非違行為です。無断欠勤、出勤不良、勤怠成績不良、遅刻や職場離脱等がこれに当たります。3番目は、業務命令違反です。時間外労働命令、配転命令、出向命令等を拒否するのが業務命令違反に当たります。

これまでの最高裁では、時間外労働命令や配転命令などを拒否したことは懲戒事由として争われ、事案によっては懲戒解雇となったケースもあります。業務命令違反は重い処分が下されるというのがこれまでの傾向でした。

4番目は、職場規律違反行為です。業務妨害行為、横領、背任、暴力行為、ハラスメント行為などがこれに当たります。横領や背任は懲戒解雇など厳しい処分が科される傾向にあります。これは、金額に関わらず重い処分が下されているため、横領や背任は信頼関係を破壊する行為として位置づけられています。

5番目は私生活上の非違行為です。勤務時間以外の行動も懲戒処分の対象になるというのが最高裁の立場です。また、痴漢を理由として懲戒解雇が争われた事案として、小田急電鉄事件があります。この事案では、東京地裁では退職金を全額支給としましたが、東京高裁では退職金の一部支給を認めています。

6番目は内部告発です。内部告発は、会社の不正行為などを告発する行為のことです。2006年には公益通報者保護法が立法化されました。企業の不正行為を内部告発することは、社会全体を良くする意味ではプラスに働きますが、企業価値が損なわれる側面も持っています。そのため、正当な内部告発については懲戒処分は許されないということになりますが、正当ではない内部告発が行われた場合には、懲戒処分の効力が訴訟で争われることも少なくありません。