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懲戒処分の有効性は就業規則の該当性、処分の相当性、平等取り扱い原則、適正手続きの基準により判断されます。(雇用社会と法第4回)#放送大学講義録

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次に、懲戒処分の有効性をどのように判断していくかという点について見ていきましょう。懲戒処分の有効性では、次の観点が重視されています。まず、懲戒事由該当性です。懲戒処分を行うためには就業規則の規定が必要だという話をしましたが、懲戒処分が有効となるためには、まず就業規則の規定に該当するという点が重要になります。つまり、労働者の行為が就業規則の条項に該当するか否かというのが、懲戒処分の判断を行う際の第1段階になります。懲戒処分で規定していない行為について処分を行うことはできないということになります。なお、懲戒処分の判断にあたっては、不遡及の原則や一罰不再理の原則といった刑法で学ぶ諸原則が適用されると解されています。

次に、懲戒事由に該当しているとしても、懲戒処分の相当性が求められます。特に重要なのは、処分の相当性です。これは、労働契約法第15条に規定されています。

労働契約法第15条は、使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該行為が、当該行為に係る労働者の行為の性質及び対応その他の事情に照らして客観的に合理的な理由を有し、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を乱用したものとして当該懲戒は無効とすると規定しています。簡単に言えば、懲戒処分を行う場合であっても、行為と処分の内容とはバランスが取れていることが必要だということです。客観的な理由を持って、社会通念上相当とは言えない、つまり一般的な感覚からしておかしいというような処分は権利の乱用として無効となるという判断枠組みです。

また、平等取り扱い原則も重視されます。これは、例えばAさんには重い処分を行って、同じ行為をしたBさんには軽い処分をするといった不公平な取り扱いは許されないということになります。さらに、適正手続きの観点も重視されます。適正手続きとしては、本人に弁明の機会、つまり、なぜそういうことが起きたかということを説明する機会を与えることや、懲罰委員会などの懲戒手続きを定めている場合には、そのような手続きを確実に行うことが懲戒処分の有効性判断において考慮されることになります。

訴訟で多く争われるのは、この懲戒処分の有効性判断についてです。特に、処分の相当性が多く争われることがあります。