今は成人年齢は18歳だけど、講義のまま変更はしていない点に注意。まあ浪人しない限りは18歳で大学生になるけれど。
ーーーー講義録始めーーーー
それでは、成人の発達と学習に関する最初の講義を始めたいと思います。第1回目のテーマは「社会変動と成人学習」です。成人学習では、成人のライフコースに関連するさまざまな学習活動を広く扱います。そのため、学習というものを社会学、心理学、生物学、経済学、文化人類学など、幅広い学問的視点に基づいて考えます。
成人学習は、学校教育のように制度的に一定の共通性を持って実施されるものではありません。皆さんがご自身の学習経験を振り返るとわかるように、学習はそれぞれのニーズに応じて行われ、個々の経験や背景に大きな影響を与えます。成人学習はまさに、人生に直結する「実学」と言えるのです。
今回の講義では、成人学習について理解を深めるために、以下の3つのポイントを簡単に説明します。
- 成人学習をめぐる社会的背景
- 成人学習者の特性
- 成人学習の場
さて、本題に入る前に、皆さんは「成人」をどのように定義するでしょうか? ある心理学者は、成人を16歳から20歳までの間に、成長期から成人期への移行を経て、遺伝的に制御された成長プログラムが完了した段階と定義しています。つまり、生物学的には身体的発達がピークに達した後、維持または衰退に向かう時期が成人とされます。
一方、社会学的観点では、成人とは社会が「大人」として認めた段階を指します。これは、選挙権の付与や親の同意なしで結婚できる年齢など、社会的制度に基づく権利の付与を基準にすることが多いです。また、ニューギニアやアフリカの一部地域では、成人への移行を「子どもとしての自分の終わり」と捉え、大人として再生する儀式として、苦痛を伴う肉体的訓練や入れ墨、抜歯といった通過儀礼が行われます。これらは、成人としての社会的承認と本人の覚悟を示すものです。
日本では、満20歳を成人と定義し、成人の日が国民の祝日として定められています。地方自治体が主催する成人式も、社会的に成人を祝う1つの節目と言えます。しかし、近年では先進国を中心に、経済的な豊かさにより子どもが成人になるまでの社会的学習期間が長くなっていると言われています。
例えば、大学生が20歳を迎えた場合、まだ親の経済的支援を受けていることが多く、成人としての自立や覚悟が十分に育たないかもしれません。成人とされる年齢の基準が曖昧になり、また長寿化に伴い人生全体が長くなった現代では、心理学や社会学においても子どもと成人を明確に区別するより、生涯にわたって発達し続けるものとして人生を捉えるようになっています。
この講義では、成人期を「社会に出る前の学校教育や大学教育など、初期の教育期間が終了した時点から始まる時期」として捉え、成人の発達と学習について考えていきます。