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自閉症スペクトラム障害支援では早期介入、学習能力向上、2次的問題予防が鍵。適応スキル習得と精神障害対策も重要。(障害者・障害児心理学第12回)

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最後に、自閉症スペクトラム障害の支援をする上で心に留めておくべきことを話します。自閉症スペクトラム障害は、早期からの介入がとても重要です。学習することができる、または得意な自閉症スペクトラム障害者は、障害により困難の生じる場面を、その学習したスキルを使い乗り越えていきます。

そのため、教えられる能力、つまり学ぶ能力を向上させていくことが鍵となります。そして、学ぶ内容は、自閉症の重症度、存在する障害、特に知的障害の有無、環境、年齢により変えていかなければならず、また変わっていかなければなりません。

自閉症スペクトラム障害者は2次的問題を持ちやすいということも心に留めておく必要があります。自閉症スペクトラム障害の2次的問題とは、例えば、対人関係がうまくいかず、いじめの被害を受けたり、不登校や社会的ひきこもりになったり、保護者や周囲の期待に応えられず怒られ続けたりして、うつや不安障害などの精神障害を発症するというようなことです。年齢を重ねながら自己理解を深め、同時にその時に生活している環境の中で必要な適応スキルを学び、それらを使いながら生活を行う中で、自分が成長していると感じ、生活していくことがとても重要です。

 

 

 

自閉症スペクトラム障害治療の目標は症状低減、学習促進、問題行動改善。効果的な介入にはABAやソーシャルスキルトレーニングが含まれる。(障害者・障害児心理学第12回)#放送大学講義録

様々な支援の方法があることを知る。

 

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次は、自閉症スペクトラム障害への治療のゴールについて、今のところ、主に1. 中心的な症状、社会的なコミュニケーションと相互作用の欠如、情動反復的な行動、興味と併存的な症状の低減、2. 学習能力の促進と適応、行動スキルの獲得の最大化、3. 機能的スキルを妨害する問題行動(チャレンジングビヘイビアと呼ばれる)の改善があります。そして、治療のための介入は、教育、発達的介入、行動的介入の中で実施されます。

アメリカのナショナルオーティズムセンターは、22歳以下の自閉症スペクトラム障害者に対し、十分なエビデンスがある効果的な14の介入を紹介しています。ほとんどは、応用行動分析(Applied Behavior Analysis, ABA)によるものであり、行動心理学(Behavioral Psychology)、積極的行動支援(Positive Behavioral Support)に関連しています。発達心理学(Developmental Psychology)、障害児教育(Special Education)、言語理学(Speech-Language Pathology)による介入も増えています。

自閉症スペクトラム障害に有効な介入は、1. 行動的介入、2. 認知行動的介入、3. 包括的行動治療(幼児対象)、4. 表出言語訓練、5. モデリング、6. 自然な教授方略、7. ペアレントトレーニング(保護者へのトレーニング)、8. ピアトレーニング(友達へのトレーニング)、9. ピボタルレスポンストレーニング(PRT)、10. スケジューリング、11. セルフマネージメント、12. ソーシャルスキルトレーニング、13. 物語準拠型指導が効果的であるとされています。また、ナショナルオーティズムセンターによると、22歳以上の自閉症スペクトラム障害のある人を対象に確立されているのは、行動的介入のみです。

行動的介入とは、適応的な行動を増やし、問題行動(チャレンジングビヘイビア)を減少させる応用行動分析によるものを指します。自閉症スペクトラム障害の臨床ニーズは、認知、言語、運動動作、自立、社会性、情動、集団適応、問題行動、余暇活動、精神的ウェルビーイングなど広範囲の領域に及び、またそれらは成長に伴って変化します。幼児期が終わり学童期になっても、対人関係や社会性に関する適応や、問題行動や精神疾患の併存に対して、その都度状態に合わせた支援が必要になります。

自閉症スペクトラム障害に対する最もポピュラーな行動的アプローチは、応用行動分析によるものです。応用行動分析は、社会的に重要な行動を改善するために行動原理を組織的に応用し、実験を通じて行動の改善に影響した変数を同定する科学と定義されています。臨床的には、応用行動分析は教えるための技術であり、教える内容は対象者によって異なります。

就学後以降の応用行動分析によるアプローチは、学習のための教育的アプローチと、問題行動や併存症に対する治療的アプローチに大別できます。教育的アプローチには、読み書きを含む各教科の指導、学校適応のための社会的スキルの指導、家庭生活スキル(食事、着替え、入浴、清掃、金銭管理など)や、地域生活スキル(介護、公共施設の利用、交通機関の利用、地域行事への参加など)への指導が含まれます。応用行動分析の基本的技法には、タスクアナリシス、チェーン化、システマティックプロンプティングとフェーディング、ディスクリートトライアルトレーニング、ビデオモデリングなどがあります。

また、攻撃行動、自傷行動、破壊的行動などの問題行動(チャレンジングビヘイビア)に対しては、機能分析と機能的コミュニケーショントレーニングによる適切な代替行動を教えるアプローチが効果を上げています。

 

 

 

自閉症スペクトラム障害理解に心の理論、ミラーニューロン、中枢統合、実行機能、手続き学習の障害を解説。心理学的視点から。(障害者・障害児心理学第12回)#放送大学講義録

様々な障害の種類があるのだなあと知る。

 

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次は、心理学の観点から自閉症スペクトラム障害の理解について話しましょう。

自閉症スペクトラム障害の原因が脳のどの機能障害にあるかについては、現時点で明確ではありません。また、脳科学の理論モデルの基となる心理学的理解においても、すべての症状を説明できるモデルはまだ存在しません。しかし、自閉症スペクトラム障害の症状を部分的に説明しようとしている理論モデルがあります。これらは、自閉症スペクトラム障害者の生活におけるさまざまな場面での理解に役立つと思われます。

まず、「心の理論」(Theory of Mind)です。これは、他人の思考や感情を想像する能力を指し、人が周囲の世界を理解し、背後にある意図、願望、希望、感情などを捉えることを意味します。この能力が欠如していると、人は他人の行動を表面的にしか解釈できません。自閉症スペクトラム障害では、他者の信念を推定し、その推定に基づいて他者の次の行動を予測する「他者理解」の能力が制限されているとされます。

また、「ミラーニューロンのシステム障害」は、模倣の障害を引き起こし、他者の動きや感情を自らの情動システムで共有する共感の障害も想定されています。

次に、「中枢統合(セントラルコヒーレンス)の障害」です。これは、多様な情報から中心的で主要な情報や概念を選択的に抽出し整理する能力です。自閉症スペクトラム障害の場合、全体を統合し意味を見出すことに困難があり、部分的な情報処理に偏りが見られます。例えば、ジグソーパズルを組み立てる際には、ピースの形状には注目するものの、絵柄の関連性を見落とすことがあります。

「実行機能(エグゼクティブファンクション)の障害」も重要です。目的を達成するために計画を立て、方略を維持する能力がこれに該当します。自閉症スペクトラム障害では、この能力の障害により、目先の欲求を後回しにすることが難しく、障害の程度が重度であるほど問題が顕著になります。

最後に、「手続き学習(プロセデュアルラーニング)」の問題があります。自閉症スペクトラム障害者は、具体的な事実に関する記憶は良好ですが、学習した内容を繰り返しによって自動化し、必要に応じて検索する「手続き学習」に障害があることが知られています。これにより、実用的な技能の適用に困難を抱え、時にパニック状態になることがあります。

 

 

 

自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもの特徴を発達段階別に解説。エコラリア、社会的相互作用の困難、情動共有の欠如を含む。(障害者・障害児心理学第12回)#放送大学講義録

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では次に、発達段階別に自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもが見せる特徴について話します。自閉症スペクトラム障害の特徴は年齢や成長とともに変化し、症状の程度による個人差も大きいですが、発達段階別に比較的よく見られる特徴を、印刷教材の表1、表2、表3に示しました。

まず、乳児期には、視線をそらす、顔をあまり見ない、後追いをあまりしないなどの特徴があります。これらは対人関係における障害の一例と言えます。親が視線を向けている対象に自分の視線を合わせないことは、共同注意の欠如と言えます。抱っこした時にしっかりとしがみつかない、抱っこした時の体が重く感じる、社会的な微笑が少ないなどは、情動の共有の欠如の表れと考えられます。1歳頃には、発語が少なく、その段階で期待される言葉を話さないことが多いです。

次に幼児期です。この期には、周囲への興味が薄く、視線を合わせようとしない、他の子どもへの興味がない、共に遊ぼうとしない、名前を呼ばれても振り返らない、興味のあるものを指差して人に何かを伝えようとしないなどの特徴が見られます。定型発達の子どもは、約2、3ヶ月頃から指差しを使い、興味のあるものを指してそれを人に伝えようとしますが、ASDの子どもにはこれが見られません。彼らは主体的に大人と共同で遊ぶことが少なく、受動的です。このように、周囲への興味が薄く、コミュニケーションを取るのが困難な特徴が見られます。知的障害を伴う自閉症スペクトラム障害の子どもは、言語の遅れやエコラリア(オウム返し)などの特徴があります。エコラリアには、すぐにオウム返しをする即時性エコラリアと、しばらく時間が経ってからオウム返しをする遅延性エコラリアがあります。会話をする際には、一方的に自分の言いたいことだけを話したり、質問に対してうまく答えられないことがあります。これは、適切な相互作用の困難さを示しています。定型発達の子どもが友達とのごっこ遊びを好むのに対し、ASDのある子どもは、ごっこ遊びや振り遊びなどに興味を示しません。これは想像力の障害と言えます。

さらに、幼児期から強いこだわりを見せ始めます。例えば、興味のあることに関して同じ質問を繰り返したり、既に結果が分かっている行動を何度も繰り返します。これは、結果ではなく方法や手順へのこだわりです。また、日常生活においても特定のルーティンや順序へのこだわりが見られ、何かがいつもと違うと混乱し、パニックになることがあります。

幼児期が終わり学齢期に移行すると、集団に馴染むのが難しいという特徴が見られます。同年代の友人関係が少ない、周囲への配慮が薄く、自分の好きなように物事を進める傾向があり、人との関わりが限定的で、何かしてほしいときにのみ交流が見られます。基本的には一人遊びを好み、臨機応変に対応するのが苦手です。したがって、ルールが明確に決められている状況では活き活きと活動できますが、そうでない場合には、状況に応じた対応が非常に苦手です。さらに、小学校の段階では、「どのように」「なぜ」といった説明が苦手な傾向があります。

小学校を卒業し、思春期から成人期に移行すると、不自然な話し方、他人の感情や気持ちを読み取るのが苦手、雑談が苦手といった特徴がよく見られるようになります。そして、興味のある分野にはとことん没頭します。

 

 

 

自閉症スペクトラム障害の診断と評価にはADOS, ADI-R, CARS等の検査が用いられ、感覚処理異常の評価も重要です。(障害者・障害児心理学第12回)#放送大学講義録

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次に、自閉症スペクトラム障害の診断と判断のための検査についてお話しします。

自閉症スペクトラム障害の診断や疑いの判定、症状の把握のために使用される検査を紹介します。診断に用いられるものとして、まずADOS(Autism Diagnostic Observation Schedule)があります。ADOSは、言語と非言語コミュニケーション、相互的対人関係、遊び、創造力、情緒的行動と限定的興味、その他の異常行動の特徴的な側面の評価、DSMの診断基準に基づく自閉症スペクトラム障害の判定、自閉症スペクトラム障害の症状の程度の判定ができます。次にADI-R(Autism Diagnostic Interview-Revised)です。精神年齢が18か月以上であれば、幼児から成人まで幅広い年齢に対応しています。

DSM-IVの診断基準である相互的対人関係の質的異常、意思疎通の質的異常、限定的、反復的、情緒的行動様式に焦点が当てられ、自閉症スペクトラム障害の判定を行うことができます。CARS(Childhood Autism Rating Scale)もよく用いられます。

2歳以上の対象者に実施でき、言語水準などの機能レベルに関わらず評定できます。観察、面接、その他の資料に基づく包括的な情報を使用します。

スクリーニングに用いられるものとして、代表的なものはPARSです。自閉症スペクトラム障害の発達行動症状について、主要な養育者と面接し、その特性、症状の可能性と程度を評定します。対人コミュニケーション、こだわり、情緒、行動困難性、過敏性の評価を行うため、57項目から構成されています。

DSM-5から診断基準Bの1つの症状に感覚処理の障害が加えられました。このことから、感覚異常の判定の必要性が高まりました。そのために用いられるのは、SP(Sensory Profile)です。聴覚、視覚、触覚、平衡感覚などの感覚に関する125項目の質問票に保護者と本人が記入し、感覚特性を把握します。結果は、低登録、感覚探求、感覚過敏、感覚回避に分類できるようになっています。知的能力については、自閉症スペクトラム障害に特化された知能検査はありません。他の発達障害や知的障害と同じように、ウェクスラー知能検査や田中ビネ知能検査などが使われます。認知処理については、D-KEFS(Delis-Kaplan Executive Function System)やKABC(Kaufman Assessment Battery for Children)などが使用されます。言語能力の測定には、ITPA(Illinois Test of Psycholinguistic Abilities)などがあります。また、社会生活能力に関してはバインランド適応行動尺度が使用されます。特別支援学校では、知能検査が行えない子供に対しては、SM(Social Maturity Scale)社会生活能力検査を用いることもあります。

 

 

 

自閉症スペクトラム障害(ASD)の原因は未特定で、遺伝的・環境的要因が関与。出現率は国際的に増加傾向にあり。(障害者・障害児心理学第12回)#放送大学講義録

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次に、自閉症スペクトラム障害の原因について話をします。

自閉症スペクトラム障害の原因はまだ特定されていません。しかし、ウィングらの指摘以来現在まで、何らかの脳の機能障害がその原因であるとされています。それ以前は、しつけの仕方や愛情不足など、保護者の育て方が原因なのではないかと言われていましたが、現在では完全に否定されています。

脳の機能障害が生じる一因として、遺伝的要因と環境的要因が組み合わさったことによる発生が疑われています。しかしながら、今のところ明確なことはわかっていません。遺伝子については、自閉症スペクトラム障害に関して100を超える候補遺伝子が見つかっていますが、すべての自閉症スペクトラム障害の症例に共通する特定遺伝子の変異が観察されているわけではありません。ただし、自閉症スペクトラム障害に対する遺伝因子の寄与の割合は、従来考えられていたほど高くはないのではないかと言われています。自閉症スペクトラム障害者の脳は生まれた時はやや小さめであり、2歳から5歳の段階で容量が正常範囲を逸脱して大きくなり、その後成人段階では定型発達と変わらなくなります。幼児期の脳の容量の増大は、前頭葉、側頭葉、頭頂葉の高機能を司る領域で起こり、これが複数の領域を結びつける神経回路形成の失敗を意味しているのではないかと考えられていますが、これについても結論は出ていません。

原因に関してはまだわからないことばかりの自閉症スペクトラム障害ですが、一体どのくらいの割合で存在するのでしょうか。次はその疫学について話をします。国際的には、自閉症スペクトラム障害の出現率は160人に1人の割合と言われています。しかし、これはいくつかの研究の平均的な出現率であり、よくコントロールされた研究では自閉症スペクトラム障害の出現率はさらに高くなります。その代表的な研究が、8歳児を対象にした米国疾病予防管理センター(CDC)の定期的な統計で示されています。2004年の疫学調査では166人に1人でしたが、2014年の調査では88人に1人と倍になり、そして2018年の調査では59人に1人とさらに増えています。特に増えているのは、知的障害のない自閉症スペクトラム障害と診断される人たちです。自閉症スペクトラム障害が増加している理由については、認識の向上、診断基準の拡大、診断用ツールの質的向上などがWHOにより理由として挙げられているほか、教育、福祉における提供サービスの充実などもその理由なのではないかと考えられています。その一方で、自閉症スペクトラム障害そのものが増加しているのではないかということも最近では考えられるようになってきています。

 

 

 

DSM-5に基づき、自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断基準、社会的コミュニケーション障害、反復的行動、感覚処理障害を解説。(障害者・障害児心理学第12回)#放送大学講義録

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自閉症スペクトラム障害について、DSM-5の診断基準に基づいて説明します。この障害は、複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互作用における持続的な欠陥と、行動、興味、または活動の限定された反復的な様式の2つの主要な症状を特徴とします。

DSM-5の診断基準では、社会的コミュニケーションおよび対人的相互作用における持続的な欠陥には、社会的および情緒的な相互関係の障害、他者との交流に用いられる非言語的コミュニケーションの障害が含まれます。

行動、興味、または活動の限定された反復的な様式には、特徴的な手振りや物の使い方、話し方、同一性へのこだわり、日常動作への融通の利かない執着、言語的、非言語的な儀式的な行動パターン、集中度や焦点付けが異常に強く限定的で固定された興味、感覚入力に対する過敏性または鈍感性、感覚に関する環境に対する過度の注意の5項目があります。自閉症スペクトラム障害と診断されるためには、A項目の3項目全て、B項目の4項目中2項目以上、合計5項目以上を満たさなければなりません。A項目を満たしてもB項目を満たしていない場合、自閉症スペクトラム障害ではなく、社会的コミュニケーション障害と診断されます。また、以前のDSMには3歳以前の発症という年齢基準がありましたが、現在ではこれは緩和され、成人以降の発症も許容されています。DSM-5の変更点は、自閉性障害、アスペルガー障害、PDD-NOS、小児期崩壊性障害という分類を撤廃し、自閉症スペクトラム障害という単一の診断基準に統合したこと、および社会性の障害、コミュニケーションの障害、反復的、限定的行動の3つから、社会的コミュニケーションの障害、反復的、限定的行動という2つに再編、統合したことです。そして、診断基準Bの1つの症状に感覚処理の障害が加えられました。この異常は、視覚、聴覚、触覚、痛覚、嗅覚、口腔感覚、味覚、温度感覚などの各種感覚で生じます。

臨床的には、過敏性または鈍感性など、感じ方の程度で分類されます。視覚過敏、触覚過敏、痛覚の鈍感性、嗅覚、平衡感覚、味覚過敏などの様子が事例研究の中で描かれてきました。また、これらの一次的な感覚処理に加え、高次な感覚処理の障害も生じていると考えられています。この異常は複数の感覚処理時に現れ、特に視覚間の処理中に別の感覚処理が加わった時に生じやすいとされています。自閉症スペクトラム障害は、症状の重さ、発達段階によって状態が大きく変化します。また、自閉症の症状の程度や併存する障害、代表的なものは知的障害ですが、それらの障害の程度により、生活全般に支障のある人もいれば、ほとんど支障なく生活を送っている人もいます。そのため、自閉症スペクトラム障害は幅広い臨床像を示します。それゆえに、個々に応じた支援が必要になります。

自閉症スペクトラム障害の多くの者は、知的障害や言語障害、注意欠如・多動症(ADHD)、不安障害、睡眠障害、てんかんなど、治療を必要とする他の疾患が併存します。自閉症スペクトラム障害の約70%は何らかの併存障害があると言われています。アメリカ小児学会では、自閉症患者の約40%に知的障害があり、学齢期の小児および成人の自閉症患者では40から60%に不安障害があると報告しています。また、DSM-5からは、これまで併存障害として診断されなかった注意欠如・多動症(ADHD)の併存が自閉症スペクトラム障害で認められるようになりました。つまり、2つの診断名を持つことが可能になりました。