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DSM-5に基づき、自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断基準、社会的コミュニケーション障害、反復的行動、感覚処理障害を解説。(障害者・障害児心理学第12回)#放送大学講義録

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自閉症スペクトラム障害について、DSM-5の診断基準に基づいて説明します。この障害は、複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互作用における持続的な欠陥と、行動、興味、または活動の限定された反復的な様式の2つの主要な症状を特徴とします。

DSM-5の診断基準では、社会的コミュニケーションおよび対人的相互作用における持続的な欠陥には、社会的および情緒的な相互関係の障害、他者との交流に用いられる非言語的コミュニケーションの障害が含まれます。

行動、興味、または活動の限定された反復的な様式には、特徴的な手振りや物の使い方、話し方、同一性へのこだわり、日常動作への融通の利かない執着、言語的、非言語的な儀式的な行動パターン、集中度や焦点付けが異常に強く限定的で固定された興味、感覚入力に対する過敏性または鈍感性、感覚に関する環境に対する過度の注意の5項目があります。自閉症スペクトラム障害と診断されるためには、A項目の3項目全て、B項目の4項目中2項目以上、合計5項目以上を満たさなければなりません。A項目を満たしてもB項目を満たしていない場合、自閉症スペクトラム障害ではなく、社会的コミュニケーション障害と診断されます。また、以前のDSMには3歳以前の発症という年齢基準がありましたが、現在ではこれは緩和され、成人以降の発症も許容されています。DSM-5の変更点は、自閉性障害、アスペルガー障害、PDD-NOS、小児期崩壊性障害という分類を撤廃し、自閉症スペクトラム障害という単一の診断基準に統合したこと、および社会性の障害、コミュニケーションの障害、反復的、限定的行動の3つから、社会的コミュニケーションの障害、反復的、限定的行動という2つに再編、統合したことです。そして、診断基準Bの1つの症状に感覚処理の障害が加えられました。この異常は、視覚、聴覚、触覚、痛覚、嗅覚、口腔感覚、味覚、温度感覚などの各種感覚で生じます。

臨床的には、過敏性または鈍感性など、感じ方の程度で分類されます。視覚過敏、触覚過敏、痛覚の鈍感性、嗅覚、平衡感覚、味覚過敏などの様子が事例研究の中で描かれてきました。また、これらの一次的な感覚処理に加え、高次な感覚処理の障害も生じていると考えられています。この異常は複数の感覚処理時に現れ、特に視覚間の処理中に別の感覚処理が加わった時に生じやすいとされています。自閉症スペクトラム障害は、症状の重さ、発達段階によって状態が大きく変化します。また、自閉症の症状の程度や併存する障害、代表的なものは知的障害ですが、それらの障害の程度により、生活全般に支障のある人もいれば、ほとんど支障なく生活を送っている人もいます。そのため、自閉症スペクトラム障害は幅広い臨床像を示します。それゆえに、個々に応じた支援が必要になります。

自閉症スペクトラム障害の多くの者は、知的障害や言語障害、注意欠如・多動症(ADHD)、不安障害、睡眠障害、てんかんなど、治療を必要とする他の疾患が併存します。自閉症スペクトラム障害の約70%は何らかの併存障害があると言われています。アメリカ小児学会では、自閉症患者の約40%に知的障害があり、学齢期の小児および成人の自閉症患者では40から60%に不安障害があると報告しています。また、DSM-5からは、これまで併存障害として診断されなかった注意欠如・多動症(ADHD)の併存が自閉症スペクトラム障害で認められるようになりました。つまり、2つの診断名を持つことが可能になりました。