-------講義録始め------
では次に、発達段階別に自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもが見せる特徴について話します。自閉症スペクトラム障害の特徴は年齢や成長とともに変化し、症状の程度による個人差も大きいですが、発達段階別に比較的よく見られる特徴を、印刷教材の表1、表2、表3に示しました。
まず、乳児期には、視線をそらす、顔をあまり見ない、後追いをあまりしないなどの特徴があります。これらは対人関係における障害の一例と言えます。親が視線を向けている対象に自分の視線を合わせないことは、共同注意の欠如と言えます。抱っこした時にしっかりとしがみつかない、抱っこした時の体が重く感じる、社会的な微笑が少ないなどは、情動の共有の欠如の表れと考えられます。1歳頃には、発語が少なく、その段階で期待される言葉を話さないことが多いです。
次に幼児期です。この期には、周囲への興味が薄く、視線を合わせようとしない、他の子どもへの興味がない、共に遊ぼうとしない、名前を呼ばれても振り返らない、興味のあるものを指差して人に何かを伝えようとしないなどの特徴が見られます。定型発達の子どもは、約2、3ヶ月頃から指差しを使い、興味のあるものを指してそれを人に伝えようとしますが、ASDの子どもにはこれが見られません。彼らは主体的に大人と共同で遊ぶことが少なく、受動的です。このように、周囲への興味が薄く、コミュニケーションを取るのが困難な特徴が見られます。知的障害を伴う自閉症スペクトラム障害の子どもは、言語の遅れやエコラリア(オウム返し)などの特徴があります。エコラリアには、すぐにオウム返しをする即時性エコラリアと、しばらく時間が経ってからオウム返しをする遅延性エコラリアがあります。会話をする際には、一方的に自分の言いたいことだけを話したり、質問に対してうまく答えられないことがあります。これは、適切な相互作用の困難さを示しています。定型発達の子どもが友達とのごっこ遊びを好むのに対し、ASDのある子どもは、ごっこ遊びや振り遊びなどに興味を示しません。これは想像力の障害と言えます。
さらに、幼児期から強いこだわりを見せ始めます。例えば、興味のあることに関して同じ質問を繰り返したり、既に結果が分かっている行動を何度も繰り返します。これは、結果ではなく方法や手順へのこだわりです。また、日常生活においても特定のルーティンや順序へのこだわりが見られ、何かがいつもと違うと混乱し、パニックになることがあります。
幼児期が終わり学齢期に移行すると、集団に馴染むのが難しいという特徴が見られます。同年代の友人関係が少ない、周囲への配慮が薄く、自分の好きなように物事を進める傾向があり、人との関わりが限定的で、何かしてほしいときにのみ交流が見られます。基本的には一人遊びを好み、臨機応変に対応するのが苦手です。したがって、ルールが明確に決められている状況では活き活きと活動できますが、そうでない場合には、状況に応じた対応が非常に苦手です。さらに、小学校の段階では、「どのように」「なぜ」といった説明が苦手な傾向があります。
小学校を卒業し、思春期から成人期に移行すると、不自然な話し方、他人の感情や気持ちを読み取るのが苦手、雑談が苦手といった特徴がよく見られるようになります。そして、興味のある分野にはとことん没頭します。