様々な障害の種類があるのだなあと知る。
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次は、心理学の観点から自閉症スペクトラム障害の理解について話しましょう。
自閉症スペクトラム障害の原因が脳のどの機能障害にあるかについては、現時点で明確ではありません。また、脳科学の理論モデルの基となる心理学的理解においても、すべての症状を説明できるモデルはまだ存在しません。しかし、自閉症スペクトラム障害の症状を部分的に説明しようとしている理論モデルがあります。これらは、自閉症スペクトラム障害者の生活におけるさまざまな場面での理解に役立つと思われます。
まず、「心の理論」(Theory of Mind)です。これは、他人の思考や感情を想像する能力を指し、人が周囲の世界を理解し、背後にある意図、願望、希望、感情などを捉えることを意味します。この能力が欠如していると、人は他人の行動を表面的にしか解釈できません。自閉症スペクトラム障害では、他者の信念を推定し、その推定に基づいて他者の次の行動を予測する「他者理解」の能力が制限されているとされます。
また、「ミラーニューロンのシステム障害」は、模倣の障害を引き起こし、他者の動きや感情を自らの情動システムで共有する共感の障害も想定されています。
次に、「中枢統合(セントラルコヒーレンス)の障害」です。これは、多様な情報から中心的で主要な情報や概念を選択的に抽出し整理する能力です。自閉症スペクトラム障害の場合、全体を統合し意味を見出すことに困難があり、部分的な情報処理に偏りが見られます。例えば、ジグソーパズルを組み立てる際には、ピースの形状には注目するものの、絵柄の関連性を見落とすことがあります。
「実行機能(エグゼクティブファンクション)の障害」も重要です。目的を達成するために計画を立て、方略を維持する能力がこれに該当します。自閉症スペクトラム障害では、この能力の障害により、目先の欲求を後回しにすることが難しく、障害の程度が重度であるほど問題が顕著になります。
最後に、「手続き学習(プロセデュアルラーニング)」の問題があります。自閉症スペクトラム障害者は、具体的な事実に関する記憶は良好ですが、学習した内容を繰り返しによって自動化し、必要に応じて検索する「手続き学習」に障害があることが知られています。これにより、実用的な技能の適用に困難を抱え、時にパニック状態になることがあります。