日本外交がナイーヴだという意見がある。その意見にそれほど確たる根拠はないが、日本外交はずる賢くないと主張する国際政治学者は時々見かける。確かに太平洋戦争の時期の外交はナイーヴな面はあるように思える。ハル・ノートというアメリカからの「最後通牒」を真に受けて最終的に対米戦争を決断したのだけど、総論で同意しておいて実施過程で骨抜きにする策はあったのではないかと思う。あと、44年夏にサイパン島をアメリカに取られてから、日本は中立条約を結んでいたソ連に和平の仲介を依頼した。しかし日本の同盟国たるドイツとソ連は戦っていたのだから、日本に好意を持つ可能性は少ないと見るのが妥当ではなかっただろうか。それから45年8月に中立条約を破棄してソ連は日本と戦端を開き大本営は驚いたらしいけど、関東軍は満州に侵攻するという兆候は得ていた。何しろ長らくの間、陸軍の仮想敵国はソ連だったのだから。まあ沖縄にまで米軍が侵攻したので、それどころではなかったのだろうけど。