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ヤマトタケルの物語(『古事記』と『万葉集』第6回)

ヤマトタケルの美少女ぶりを今までは怪訝に思っていたけれど、高貴な方だと考えれば辻褄が合うかもしれない。ただ、私はクマソタケルの兄弟の宴会にも行ってみたいとも思う。

 

多田一臣。高山久美子。ヤマトタケル。もちろん、実在の人物ではない。伝承の中で作り上げられた。存在が作られた必然性が歴史的に存在していたはず。王権の論理とヤマトタケル。景行天皇の御子とされる。古事記と日本書紀では大きな役割を果たすが、異なる在り方。日本書紀ではあくまで景行天皇に忠実な御子として描かれる。天皇の信頼を得ながら行動。景行天皇は古事記では目立たないが、日本書紀では随分と活躍。景行天皇は長期間いて豪族を。九州を長期間いて平定。古事記ではヤマトタケルの存在が圧倒的に大きい。日本書紀では景行天皇はほぼ対等。そもそも古事記においては景行天皇から疎まれ悲劇の主人公として。古事記と日本書紀は共に大和の王権の版図の拡大。従わない勢力を如何に平定するか。5世紀の歴史的な投影が。中国の宋。南朝の宋。宋書倭国伝。倭王武。雄略天皇のこととされる。要するに大和の王権が倭王武の頃までに東西に領土を拡大。近年の考古学上でもそうした事実が裏付けられている。例えば埼玉県の稲荷山古墳の鉄剣。在地豪族が武人として景行天皇に仕える。熊本県でも。5世紀半ばでかなりの。東西平定の過程を。景行記の記事。ヤマトタケルと雄略天皇の関係。雄略天皇の像はヤマトタケルの像に反映。名前の類似。雄略天皇。古事記の下巻に。ワカタケルの尊。ヤマトタケルの名とよく似ている。どちらにも荒々しい姿勢。神との対決の姿勢。深いつながり。大和の王権の領土拡張。雄略天皇の像を意識してヤマトタケルの像を。古事記と日本書紀では捉え方がそうとう違う。古事記の歴史意識。編纂意図の違いが。国家の歴史を描く日本書紀。代ごとの王権の歴史が古事記。登場人物の行動でも国家の制度の中での行動を。編年体にもつながるが、国家の歴史として日本書紀。古事記では権力の帰趨として捉える。結果としてそれぞれの登場人物や人間関係を物語風に。物語として語る。ヤマトタケルが悲劇的英雄であることの理由は?もう一つ。ヤマトタケルには矛盾がそのまま現れる。王権の中心から阻害され辺境に追いやられる。古代の王権の顕れ?ヤマトタケルが景行天皇から疎まれる。暴力性が天皇を脅かす。少年の時に兄の行動をたしなめるように言われたにも関わらず。心を和らげるという意味を反対に捉え殺害して投げ捨てる。反秩序的な。結果として王権の中心から排除。一方で周縁に追いやることで安定をするシステムが。暴力性は中心にある限りは反秩序的なあり方。その暴力性は打ち倒す力を。王権はかえって強固なものに。古代の王権の論理。西国。南九州のクマソタケル。出雲の出雲建。東国の神々の制圧を。そのようにして辺境に追いやられるヤマトタケルを悲劇の主人公として、身を寄せるように。強いられた孤独への共感。伊勢の神に叔母を訪れ、父から排除される自分の運命を訴えかける。日本書紀には絶対に出てこない。ヤマトタケルは天皇の徳を解いて。ならぬなら武力で。優等生の答え。感動する要素はない。古事記は運命に寄り添い犠牲になった。高い文学性。
ヤマトタケルの具体的行動。クマソタケルの兄弟を討つ。クマソタケルという名が勇者という意味。首長として良い。兄弟であることが面白い。成年前の少年。屋敷を伺うと宴会があるらしいと。女装をして侵入。美少女ぶりに感じ入り呼び寄せる。小碓命の暴力性と美しさとの落差。中性的な容貌として捉えられる。源氏物語では光源氏を女性にして見てみたいと。国宝源氏物語絵巻の貴族の容貌。男女の違いは見られない。髪やひげを除くとほぼ同じ。庶民の絵巻。庶民の顔は実にリアル。ずっと面白い。古代の人の考え方が。つまり貴族は身分が高ければ理想の型に収斂、しかも女性らしい。小碓命は美少女に紛うような美しさ。牛若丸と弁慶の対決も同じような。クマソタケルの兄弟に近づき刀を出して兄を殺す。弟は慌てて逃げ出す。新築の建物は高床式。木のはしごを逃げようとしたら追いかけて背中の皮を掴んで。おかしい表現?尻から刀を刺し通される。命の猶予を乞う。止めをさすのを待って欲しいと。名前を献上して祝福。大和のタケル。すぐに弟を殺す。刀を揺り動かして。リアルな描写だがからりとした暴力性。感傷的には描かないことが大事。美少女のようなヤマトタケル。なかなかすごみが。文学性が高い。敗者が何故祝福までするのか。呪いの言葉ではなく反対。どう考える?名を変える。成人式の反映。与えられて一人前の英雄として生まれ変わる。オオナムヂも大国主の名前を。成年式の反映と。敗者の側からの祝福。命を奪う相手からの祝福。怨念を祝福に変える論理。怨念を鎮める。王権の側からすれば魂鎮めを図らなければ。できれば王権の力に変える。きちんと祀って守護神に。しかし微妙に違っている。クマソタケルは死という立場から。幸福の絶対的形を。魂を奉るもの。死を覚悟しているから怨念や偽りは何処にもない。敗者の名、魂を受け継ぐことで鎮められる。
ところが都に戻ると東国の平定を命じられる。足柄山から北上。甲斐の国は山梨県。歌による筑波問答。当時は結節点に。東海道ルートから道を変える。必然性がある。東国全体の平定を。東海道だけでは不充分。結節点を通り信濃の国へ。終わりで宮津姫と結婚。その後は悲劇の末路を。伊吹山の神を殺そうとして撹乱させられ死へと。ヤマトタケルが異郷での死を。何故ヤマトタケルが異郷での死を余儀なくされるか。それこそが王権の論理の帰結。個人の行為に体現。天皇として即位するなら英雄の物語になるが。代わって即位する道はない。都に近づきながら倒れる。悲劇的な死は王権の論理の要請。失敗に終わるところ。伊吹山。一面に雪が。最も深い積雪量の記録を。12メートル。伊吹おろし。強い季節風や天候の変化。神を殺しに行くのだが油断をする。草薙の剣を置き忘れる。スサノオが。守護するための剣をおいてしまう。伊吹山の神に誤った言挙げを。白いイノシシ。白き亥。実は神。偶然の出会い。突然出くわす。逢魔表現。白いイノシシに出くわす。そもそも白い動物はアルビノなので少ないので霊的な存在。吉兆とされることも。白雉などの元号にも。白いイノシシは神それ自身。神の使いと誤認して誤った言挙げを。帰りに殺そうと言ってしまう。特殊な方法での呪術。神についての断定的な表現。不用意な言挙げは危険。危機的状況で言挙げを。神に伝えて危機を回避してもらう。現実を乗り越える呪術的な。当然ながら反作用が。人を呪わば穴二つ。人を呪い殺そうとすると自分も命を落とす。言挙げが行われるのは危急存亡の場合に限られる。言挙げをすることがすべて禁じられている訳ではない。祟を受けるのは当然。氷雨、大雨の説?みぞれ状の雨と。少しずつ正気を取り戻す。氷雨の清水。現在の何処か?滋賀県米原市、関ヶ原町。醒ヶ井。玉倉部の清水。正気は少し戻ったがなかなか回復しない。ノロノロと歩く。伊勢国で死を迎える。歌謡が唄われる。三重の村。あが足はいと疲れたり。名付けて三重と。やまとは國のまほろば。大和市麗し。現在の四日市市。足が三重に曲がる。曲がり餅。ツイストドーナツのように。足が三重に。腫れ上がっていまいねじ曲がる。忍。遠く離れた対象に心が向けられる。賛美すべき対象。日本書紀では九州の地で景行天皇が。まほろば。周囲から抜きん出て優れた土地。山並み。麗し。隅々まで完璧な、という意味の褒め言葉。亡くなってしまう。魂は大きな白い鳥になって天高く。白い鳥や雲を死者の魂と。あの世に運ぶ船。その舳先に鳥が。死者の魂。古代的な英雄の悲劇的な最期。王権の論理の帰結として必然的。
仁徳天皇とイハノヒメ。

 

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