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古典から現代へ:「市民社会」を深掘り』 市民自治の知識と実践第2回(その2) #放送大学講義録

「市民自治」は手垢がついた言葉だけど、講学上は4つの意味になることは意識されないといけないだろう。

 

--------講義録始め-------

 

「市民」という概念よりも、「市民社会」という言葉が多くの用法を持ち、研究されてきました。そこで、今回は「市民社会」という概念に焦点を当てて説明します。特に、戦後日本の社会科学において、市民社会という言葉は特定の意味で使用されてきた歴史があります。

私は「市民社会」には4つの意味、または「理念形」という形での4つの類型があると考えています。「理念形」という言葉は、マックスウェーバーによって特に用いられたもので、複雑な現実を単純な概念で説明するためのものです。

今回の説明では、歴史的用法の探求よりも、歴史的用法に基づいた一般的な類型論として、4つのタイプを説明します。これらのタイプは「古典的市民社会」「ブルジョア的市民社会」「結社的市民社会」「自治的市民社会」の4つです。

古典的市民社会について、英語では「Civil Society」という言葉が使われます。この言葉は、16世紀頃のラテン語「Civitas」からの翻訳語で、古代ギリシャの「ポリス」のラテン語訳にも関連しています。ポリスとは、自由で平等な市民による自治を意味し、この文脈での市民社会の概念は、自由で平等な市民が政治に積極的に参加する共同体を形成するというものです。ただし、古代ギリシャのポリスは、奴隷や女性が市民から排除されているなど、排他的な側面も持っていました。

近代ヨーロッパにおいては、この古典的な意味での市民社会が再び重要となりました。特に、16世紀から17世紀の絶対王政が発展する中で、それに対抗する言語として「Civil Society」の概念が用いられました。この文脈では、絶対王政に対抗するための統治の形として、自由で平等な市民の共同体のイメージが強調されました。これが古典的な意味での市民社会のイメージです。2