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市民社会の理念形とその進化: ブルジョアから自治へ 市民自治の知識と実践第2回(その3)

「市民社会」は講学上も深められているが、そこから実践が展開されることもある。

 

-----講義録始め------

 

次に、ブルジョア的市民社会という概念について説明します。この概念は、ヘーゲルやマルクスが「ブルガリヒゲゼルシャフト」というドイツ語の言葉として使用しています。実際、戦後の日本の社会科学において、市民社会が特別な意味を持っていたのは、このブルジョア的な意味合いが強かったからです。特に戦後直後の日本の社会科学において、マルクスの影響が強かった時代に、この言葉が頻繁に使用されました。

ヘーゲルは観念哲学や観念論哲学で知られていますが、彼は実際に経済学にも深い関心を持っていました。特に、アダムスミスの商業社会の分析や、リカードや生の経済学を彼自身の議論に取り入れていました。アダムスミスの商業社会の分析は、近代の資本主義社会の分析として知られています。ヘーゲルはこの分析を批判的に取り入れ、商業社会を「ブルガリヒゲゼルシャフト」という概念として捉えました。

スミスの商業社会の概念は、すべての人が商人や消費者としてのアイデンティティを持つ社会を指しています。この社会では、人々は自分の必要なものを他人との交換によって得るようになりました。スミスのこのイメージは、人々が知的利益を追求することで公共の利益が生まれるというものでした。このイメージは、各個人が自分の利益を追求することで、公共の利益が生まれる市場のメカニズムを発見したものです。

このスミスの用語は、自由経済の論理を表すものであり、政治的には国家や政府の経済への介入を批判する意味も持っていました。ヘーゲルはこの概念を捉え、市民社会を経済的な自発性と相互依存の社会として理解しました。

続いて、結社的市民社会の概念について説明します。1980年代の東欧の民主主義革命は、一党独裁政治への抵抗としての市民社会の活動を前面に出しました。この時期の市民社会の活動は、労働組合や協会などの自発的な結社によって主導されました。この現象を捉えたマイケル・オルターは、市民社会を「強制によらない人間によるアソシエーションの空間」として捉えました。

最後に、自治的市民社会について説明します。これは、古典的市民社会、ブルジョア的市民社会、結社的市民社会の3つの概念を総合したものとして考えられます。この概念は、公的なアイデンティティや私的なアイデンティティを総合しながら、現代の市民が自覚的に自治を行う社会を指しています。この講義では、このような市民社会の多様性を理解してもらうことを目的としています。