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生活リスクマネジメント第1回(その2)♯放送大学講義録

「消費者」と「生活者」とは違う概念であると知った。

 

-----講義録始め-----

 

まず最初に、この科目全体を通して重要な概念となる「生活」の定義を抑えておきましょう。この授業では、生活を「人間と環境との相互作用の中での欲求充足の過程」と定義します。ここでの「充足の過程」とは、自然環境だけでなく社会環境との相互作用を含むものです。また、この欲求とは、人間らしい欲求であり、一定の価値やより良さを志向するものを指します。このより良さを志向するプロセスでは、具体的な課題の設定や資源の動員など、主体的かつ意識的な対応が伴います。本人による自覚的な工夫なしに、より良さを手にすることは困難です。

つまり、人間の生活は実態であると同時に、経営の対象でもあります。この文脈で「生活経営」という概念が出てきます。生活経営とは、個人が自らの生活価値や生活欲求の充足に不可欠な生活資源を獲得・分配し、生活行動の構成要素を形成・調整するためのマネジメントプロセスを指します。私たちが人間としての生活のより良さを追求し、主体として意識的に生活を営むその行為は、生活経営として捉えられます。

さて、この科目では「生活主体」あるいは「生活者」という言葉が頻繁に登場します。生活の主体とは、認識し行為する自我を持った人間個人を指し、個体性、身体性、実践性が強調される特性を持ちます。生活主体という用語は、生活科学の領域で、生活を科学的に認識し実践する個人として定義されています。また、社会学の分野では、生活の事実を4つの行為レベルにおける行為者の行為の複合として捉え、その行為者を生活主体として理解しています。この4つの行為レベルとは、生命維持の主体、意識の主体、社会的主体、そして文化の担い手としての主体を指します。

さらに、生活主体の他に「生活者」という用語もよく用いられます。この用語は、経済学の領域で1960年代、マーケティングの分野で1970年代から導入され、1980年代末から1990年代にかけて一般的に使われるようになりました。生産者に対立する概念としての「消費者」という言葉では、現代生活を送る個々の主体の特性を包含できないため、「生活者」という用語が生まれました。私たちは商品を消費する局面を持ちますが、人間の生活は生命の維持・発展を目的とし、そのために消費や生産、その他の活動を行います。このように、生活をトータルに捉え直すことが必要です。生活者は、それぞれの時代の価値から自律的な生活を追求し、他者や地域との交流や共存を通じて生活を営む個人の概念も表しています。

生活主体や生活者の概念に共通する視点は、自己の位置と発展を行う自律性のある個体としての捉え方、生活を多面的にトータルに捉えること、そして問題解決のための思考と実践の姿勢が盛り込まれていることの3点です。

以上、生活、生活主体、そして生活者という概念についてお話ししました。この授業では、生活主体と生活者の両方を生活の主体を表す言葉として用いることとします。