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生活リスクマネジメント第1回(その1)♯放送大学講義録

生活でリスクを知っておくのは必須かもしれない。

 

-----講義録始め-----

 

皆さん、こんにちは。生活リスクマネジメントの第1回を始めます。私は奈良由美子です。どうぞよろしくお願いします。私たち人間の生活には、様々な事象に関わるリスクが存在しています。地震や津波といった自然災害、交通事故、犯罪、病気、地球温暖化、環境破壊、化学物質による汚染や健康影響、原子力施設の事故、消費者問題、インターネット上の問題など、生活する上で遭遇する可能性のあるリスクは数えきれません。私たち人間の生活、その歴史はリスクと共にあったと言っても過言ではありません。

学術的にリスクが扱われるようになるずっと前から、人間はリスクに晒され、リスクに対処しながら生きてきました。例えば、台風などによる農耕の不作を想定して収穫物を備蓄したり、動物や他者から身を守るために見張りを立てたりといったことから、近代的な保険制度を構築するまで、リスクがあったからこそ文明が発達したと言えます。

その中で、リスクに関することわざや格言が多く生まれました。例えば、「備えあれば憂いなし」や「転ばぬ先の杖」は、リスクを管理すること、すなわちリスクマネジメントの意義を直接表現しています。また、「石橋を叩いて渡る」や「近寄らぬ神に祟りなし」は、リスクを避けることの大切さを表しています。さらに、「卵を1つの袋に入れるな」というのは、リスクを分散することの重要性を示しています。そして、「遠くの親戚より近くの他人」というのは、リスク管理の際に動員する資源についての考え方を示しています。

一方、「失敗は成功のもと」という言葉は、リスクを取らなければ何も得られないという考えを示しています。これらの格言やことわざは、置かれている状況や解決すべき問題によって、それぞれの教えが正しいと言えます。ある状況ではリスクを避け、また別の状況ではリスクを取ることが求められることもあります。

現代を特徴づけるリスクという概念を用いて、私たちの生活や社会を考えることが増えてきました。現代の社会は「リスク社会」とも言われます。公的機関、研究機関、企業など、多様な主体がリスクの影響を受け、リスク対策を行っています。私たち生活者も例外ではなく、利便性や快適性の高い生活を享受する一方で、自分たちにとってのリスクを理解し、対処する必要があります。

この科目では、15回の授業を通して、現代の生活におけるリスク、すなわち生活リスクについて、その実態と対処の課題についての理解を深めることを目指します。第1回目の今日は、全体の導入として、リスク研究への誘いというテーマで学習していきます。リスクを生活者の視点から捉える立場を取り、関連する学問領域のアプローチや15回の授業全体の構成についても触れていきます。