F-nameのブログ

はてなダイアリーから移行し、更に独自ドメイン化しました。

先使用権と知財: 科学と芸術の新視点(知財制度論第3回その16) #放送大学講義録

------講義録始め------

 

最後に、先使用権という概念をキーワードにして、知財制度との関連で芸術的創造や科学的発見について考察します。
科学的発見が行われたとき、それは知財制度と接点を持つ形で知的創造が行われます。
知的創造の保護においては、先になされたものが優先されるとされています。
知財制度の仕組みによって、先になされた知的創造が必ずしも優先されるわけではありません。これは、知的財産権が発生する際の基準、すなわち無方式主義と方式主義の違いに起因します。
ただし、先になされた知的創造は、知財制度と先使用権または先発明要件によって一定の保護が行われます。
科学的発見をした者には、「優先権(プライオリティ)」が認められます。
この優先権は、科学者に与えられる一種の名誉として認識され、その業績はしばしばエポニムとして名前が残ることがあります。
多くの研究や発表は、著者の意図やその有効性とは無関係に、匿名で広まることがあります。
例えば、HIVの発見やウイルス抗体の検査法の特許に関する論争は、このような事例の一つです。
プリゴジンが受賞したノーベル賞においても、先行研究者であるチューリングとの意見交換があったにもかかわらず、その事実は謝辞で無視されました。
このような倫理的問題は、特にノーベル賞などの大きな賞を受賞する際に重要な影響を持つことがあります。
科学的発見に関する学術論文の公表や特許出願には、「優先権」が関係しています。
この「優先権」は、知的創造に対する人格的価値を形成するものとされています。