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芸術と科学の創造性:模倣の真価(知財制度論第3回その9) #放送大学講義録

-----講義録始め-------

 

次に、芸術的創造と科学的発見について見ていきます。芸術においては、許される模倣により新たな創作がなされます。科学研究では、新たな発見が契機となり、それが技術開発に結びつきます。芸術的創造と科学的発見の間には共通性が見出せます。
作曲家を例に取り、芸術的創造について考えてみましょう。モーツァルトは、曲が頭の中にある完成された形で存在し、それをただ単に譜面に書き写していたと言われています。
それに対して、ベートーヴェンは作曲する際に譜面を何度も書き直しながら完成させていったとも言われています。
また、ベートーヴェン以降、音楽は作曲家個々のオリジナリティと密接に関連していると広く認知されています。
スティーブ・ジョブズは、「優れた芸術家は模倣し、偉大な芸術家は盗む」というピカソの言葉を元に、多くのアイデアを採用していました。
これは、オランダのゴッホ美術館と印象派との間に存在する何らかの関係性に見られます。
浮世絵の模倣は、後のゴッホの絵画における色彩感に大きな影響を与えています。
逆に、遠近法は日本画にも影響を与えています。
一般的な遠近法(パースペクティブ)による絵画は視点を固定して鑑賞しますが、大和絵のような特定のスタイルでは、視点を右から左に移動して鑑賞します。
そして、その大和絵の技法はテレビゲームの横スクロールに応用されています。
また、有田焼の柿右衛門とマイセンとの関係は、李参平と有田焼との関係と同様です。