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「効率-公正」モデルから「不確実性-社会的規制」モデルへ(1)(経済政策第1回その2)♯放送大学講義録

印刷教材というのは講義の教科書のことである。Amazonにもリンクを貼った。

 

-----講義録始め------

 

今、井上先生からご紹介いただいたように、対話形式で話を進めていきたいと思います。それでは、まず井上先生から、印刷教材の第1章についての総括をお願いします。

それでは、総括します。経済学で主流の考え方は効率公正モデルです。これは、パレート最適な資源配分を基軸とし、それがうまくいかない部分を外部の公正な判断、つまり価値判断や政治的判断によって補完するというものです。

しかし、効率公正モデルは完全情報と競争を前提としているため、市場取引に関する有意義な説明が難しいです。その有意義性は、取引コストを減らす社会的ルールによって支えられます。社会における不確実性の存在が、社会的ルールに基づく規制を必要とする点です。

効率公正モデルでは、この点を適切に説明できません。その結果、IMFがロシア経済にダメージを与えたり、日本のレジリエンスが低いままであるなどの問題が生じています。

そこで、松原先生は、これらの問題を克服するために不確実性社会的規制モデルを提唱しています。

続いて、私からもこの会について少し補足します。経済学の主流派では、理想状態、つまり完全競争の市場を前提としています。この理想状態では、参加者が多く、大きな影響力を持たないプライステイカーであり、情報が完全に行き渡っていると仮定されます。また、市場への参入障壁がないことも含まれます。

市場はこの条件下で完全に機能します。これには、需要と供給が事実として均衡し、均衡状態が規範的にも最適であるという2つの意味があります。しかし、実際には、不完全競争の状態が生じ、独占的な状況を防ぐために競争法が必要になります。

また、パレート最適でも、所得の独占や格差が問題になることがあります。市場の失敗、例えば外部性や公共財の場合は政府が介入します。最後に、景気調整のための政府の財政金融政策に関する対立もあります。

私がこのテキストで特に強調しているのは、市場が不確実性を前提にすると、うまく機能しないことがあるという点です。不確実性は、将来何が起きるか分からない状態を指します。例えば、自動車が日本に導入された当初は非常に不確実でした。

日本では昭和時代まで、毎年約1万6000人が交通事故で亡くなっていましたが、最近では3000人ほどです。2020年のコロナによる死亡者数が3500人ほどであることを考えると、自動車のリスクは社会学的にかなり把握されてきています。

不確実性の追求は恐ろしいものですが、共有資本があり、それに基づいて不確実性を飼いならすべきだと考えます。うまくいかなければ社会的な規制が必要です。市場経済は、近代に入ってからこのような形で広がってきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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