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脱施設化運動と抗精神病薬の登場が精神科ケアを変革し、家族病理論の支持喪失と地域ケアへの注目が高まりました。(家族問題と家族支援第7回)#放送大学講義録

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精神科病院の役割と機能に対する根本的な見直しが求められる中、脱施設化運動が活発化しました。この運動は、精神科病院を隔離収容施設として批判し、患者が地域社会で生活していくことの重要性を強調しました。脱施設化の背景には、抗精神病薬の登場による治療現場の変化や、精神科病院内での患者への暴力などの不祥事が公になる事例がありました。これらの事象は、精神科のケアのあり方に変化を促す重要な要因となりました。

脱施設化運動の本格化に伴い、「回転ドア現象」が問題視されるようになりました。これは患者が入退院を繰り返す現象を指し、退院後の患者が地域社会で安定した生活を送るための支援体制の不足を示しています。この課題に対処するため、退院患者を支える地域ケアの基盤を強化することが急務とされました。

一方で、1970年代以降、家族病理論は急速に支持を失いました。この理論の主張する、家族の相互作用が疾患の原因であるという点に関しては、複数の問題が指摘されました。まず、病んでいるとされた家族の相互作用が実際に疾患の原因なのか、それとも家族全員が疾患を持つことによって相互作用が病理的になったのかの区別がつかないこと。さらに、統合失調症患者のいない家族との比較研究が不足しており、特定の相互作用パターンを統合失調症患者の家族特有のものと断定できないこと。そして、家族病理論に基づく臨床実践が実際には効果を示さなかったことが理由として挙げられます。

これに加え、統合失調症に関する生物学的研究の進展や、家族による組織化された異議申し立て活動の開始も、家族病理論の支持喪失に寄与しました。これらの動きは、精神障害者のケアと治療において、家族をどのように位置づけ、支援するかに関する考え方に重要な影響を与えています。脱施設化運動とともに、家族病理論の見直しは、精神障害者が地域社会で支えられるような包括的なケア体制の構築に向けた議論を深める契機となっています。