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アタッチメントの成人分類と一貫性。(発達心理学特論第6回)♯放送大学講義録

-----講義録始め------

 

成人のアタッチメントも、4つのタイプに分類することができます。1つ目は、拒絶・脱愛着型です。これは、親との記憶に適切にアクセスできないタイプです。2つ目は、安定・自立型です。一貫した語りができ、適切に親との記憶にアクセスできるタイプです。3つ目は、とらわれ型です。親との関係やそれに伴う感情に囚われているタイプです。4つ目は、未解決・崩壊型です。語りの一貫性がなく、未解決の喪失やトラウマの語りが目立つタイプです。

乳児期のアタッチメントと成人期のアタッチメントにはどのような関連があるのでしょうか。乳幼児期のアタッチメントは、先に紹介したストレンジ・シチュエーションの手続き(SSP)によって捉えることができ、4つのタイプに分類されました。aタイプ、bタイプ、cタイプ、dタイプです。ここで捉えられるのは、その時の現実の乳児と親との関係です。そして、その親は、親自身が子供だった時の親との関係をアダルト・アタッチメント・インタビュー(AAI)によって捉えることができます。

もちろん、乳児だった人が成人になるまで追跡し、その人が親になった時にAAIを実施することもできます。ただし、成長するまでの追跡を必要とします。今日では、そうした追跡研究も行われています。アダルト・アタッチメント・インタビューでも、4つのタイプが区別されることが指摘されています。

そして、SSPとAAIのタイプには一貫性があることもデータ上で確認されています。乳児の安定型は成人の自立型に、乳児の回避型は成人の拒絶・脱愛着型に、乳児の抵抗・両極型(アンビバレント型)は成人のとらわれ型に、そして乳児の無秩序型は成人の未解決・崩壊型にと、アタッチメントタイプは生涯を通して一貫性が高いとされています。

なぜこうした高い一貫性が見られるのでしょうか。これは、アタッチメントの世代間伝達という概念で捉えられています。当初、ボウルビーは、幼少期の養育体験、つまり自分が育てられた時の体験に基づいて作られた内的作業モデル(インターナル・ワーキング・モデル)が、その人が親になった時に自分と子供との関係に適用されることから、アタッチメントの質の連続性が認められると考えました。その後の研究から、親の敏感性や家族の情緒的雰囲気などがアタッチメントの質の世代間伝達に寄与していると考えられるようになってきています。確かに昔から臨床の場で親子関係の難しさが世代を超えて影響するとの指摘がありますが、そのメカニズム自体は明確にはなっていません。

また、世代間伝達が指摘される一方で、「獲得された安定型」(Earned Security)と呼ばれる、過去の親子関係が不安定でありながら、後に適応的で安定したアタッチメントを獲得しているケースも少なくないとの指摘もあります。ネガティブな連続性を断ち切り、獲得された安定型のような安定した関係を作る要因を解明することは、今後の課題です。

世代間伝達を強調しすぎることは、自分自身の関係が不遇だった人が「自分が親になってもうまくいかないに違いない」という不適切な自己暗示を作ってしまうことになりかねません。臨床家としてはそうした視点を持つことも必要ですが、当事者にはむしろ獲得された安定型の事例が多々あることを強調しておきたいと思います。