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政策過程における評価と管理の分離(公共政策第11回)♯放送大学講義録

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そこで、次にこれら両者の関係がどうなっているのか考えていきましょう。

まず、評価的な活動と管理的な活動に関して、いかなる仕組みの下で分離を行おうとしているかが問題です。一口に分離と言ってもいくつもの方法がありますので、ここでは代表的な4つの方法を紹介します。

1番目に取り上げるのは、評価と管理を一体的に行う組織を政府から独立させて設置することで、時の政権の意向や他の要素が混入することを防止する方法です。評価を行う専門家に全面的に委ねる方法ですから、ある意味では民主主義ではないとも言えます。そのため、より重大な領域に限って活用されています。その代表例として、原子力規制があります。

ご承知の通り、2011年の福島第一原子力発電所の事故は甚大な被害を生じさせました。その後、原子力規制に対する安全規制をどのように行うかが課題となり、最終的には環境省の外局の行政委員会として原子力規制委員会が設置されました。専門家で構成される行政委員会が、科学的な見地から評価を行うだけでなく、リスクを許容する目標や手法といった管理的活動も一括して行い、最終的な決定権限を持っているところが特徴です。

2番目は、評価と管理を組織的に分離する方法です。機能を分離するならば、担当する組織自体を分離してしまえば確実であるという考え方です。代表的なものとして、内閣府の食品安全委員会があります。食品安全委員会は、2001年に発生したBSE問題での失敗をきっかけとして設置されました。それまで、食品の安全性については、生産の段階では農林水産省が、人間の健康という観点では厚生労働省がそれぞれ別々に規制していました。しかし、BSEへの対応において、農水省は食肉業界を優先する立場にあったため、汚染されていないことをアピールすることに終始し、結果として規制が不十分でした。

そのため、食品の安全性に関する評価的活動を農水省と厚労省から独立した内閣府の食品安全委員会が科学的、専門的な知見を基に実施する仕組みを導入しました。政府内外からの研究者を中心に審査を行っています。一方で、具体的な政策、すなわち管理的活動については、農水省と厚労省、そして後に設置された消費者庁がそれぞれの立場で実施する役割分担を明確化しています。また、医薬品や医療機器の審査業務という評価的な活動は、厚生労働省本体ではなく、厚生労働省の下にある独立行政法人が行うことも、組織的な分離の一例です。

3番目は、政策形成手続きの中で、評価的な活動を前もって行うことを要請する方法です。いわゆる証拠に基づく政策の理念を制度化したもので、政策評価法に基づく事前評価や、環境影響評価法による環境アセスメントの義務付けがあります。大規模開発など周囲への影響が大きい事業を行う際には、コストとベネフィットを計算する費用対効果分析や、環境への影響を調査し、その結果を公表することになっています。その結果を基に許認可手続きが行われ、管理的局面に進みます。

最後に、4番目として、政策決定手続きの中で、専門家などの関係者で構成された諮問機関を設置する方法です。この仕組みは様々な領域で取り入れられており、標準的な方法と言えます。