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生涯続くアタッチメントとその評価。(発達心理学特論第6回)♯放送大学講義録

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さて、乳児期に作られた親とのアタッチメント関係は、その後どのようになるのでしょうか。アタッチメントは乳児期にのみ成立するのではなく、人の生涯を通して続くものです。

乳児期は、ストレンジ・シチュエーションの手続きによる子供の行動からアタッチメントを捉えることができました。成人については、成人愛着面接(アダルト・アタッチメント・インタビュー、AAI)により捉えることができます。この面接では、語りを通して親との関係を捉えるものです。親について語るとき、内容に注目しがちですが、AAIでは内容よりも語りの形式や構造に着目します。

人が何かを語るとき、私たちは暗黙のルールに従って話します。これを会話の恒常性と言います。例えば、「今日はいいお天気ですね」と言われたのに対し、10分間も天気の話をし続けるのは変ですよね。相手の問いに対して適切な量、関係のある話をすることが求められ、そうでない場合、そこには何か特別な意味があると理解できます。

「あなたのお母さんはどういう人でしたか?」と聞かれて「とても立派な人でした」と答えた場合、「どのように立派だったか、何か思い出せるエピソードを話してください」と言われたら、普通はそのエピソードを語ることができるはずです。ところが、「いや、ちょっと忘れて思い出せません」と答えたら、そこに何か特別な意味があると解釈できます。立派だと答えているのに、なぜ具体例を挙げられないのでしょうか。そうした語りの一貫性のなさなどから理解しようとするのです。