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アタッチメントの発達について、定位行動、信号行動、接近行動を通じて説明。安全基地や目標修正的協調性などの概念を解説し、子供の行動変化を考察。(発達心理学特論第6回)♯放送大学講義録

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それでは、アタッチメントの発達はどのようになされるのでしょうか。アタッチメントの発達を考える前に、アタッチメントを示す行動を考えてみましょう。行動として示されるアタッチメントは、基本的にここに挙げた3つのものがあります。

1つは定位行動です。アタッチメント対象を目で追ったり、耳を澄ましてどこにいるかを確認したりする行動です。

2つ目は信号行動です。にっこり微笑んだり、泣いたり、抱っこを求める行動です。泣いている子がいれば大人は何が起きたのかと思って近づきますし、にっこり微笑まれたら嬉しくなって長くその場に留まって顔を見ようとしたりします。子供が両手を伸ばすと無条件に抱き上げたくなります。

3つ目は接近行動です。自分で移動する能力を獲得すると、アタッチメントの対象から離れずに、しがみついたり、後を追いかけたりします。

このようなアタッチメント行動は、生まれて3年間くらいの間に4つの段階を経て発達します。これらの段階は、子供の行動能力の違いによって生じるものです。

生まれてから最初の3ヶ月頃までは、人の顔らしいもの、2つの目があれば、それに注意を向けてじっと見たり、それに笑いかけたりします。この時期には、特定の人を区別して、その人に対してというわけではなく、人らしいものに対して反応が起こります。

その後、生後半年くらいまでの間に特定の人が区別されるようになります。いつも見ているお母さんに対して笑いかけたりするようになります。ある5ヶ月の家庭訪問時に、お腹が空いた赤ちゃんがぐずり始め、お母さんが「ミルクね」と言って台所に行った際、それは母乳ではなくミルクの赤ちゃんだったんですが、泣き止んでじっと耳を澄ませてお母さんの足音を聞き、お母さんが戻ってくる足音を聞くと、まるで「さっきからずっと泣いていました」と言わんばかりに大きく泣き始めるという行動がありました。

生後半年くらいから2、3歳頃までは、子供自身が移動能力を獲得し、特定の対象にまさにくっついている状態を維持するようとする行動が目立つ時期です。この時期、一瞬でも姿が見えなくなると子供が泣き叫ぶので、ゴミを出しに行く際や洗濯物を干す際、あるいはトイレに入るのもままならないことがたくさんあります。公園に親子で遊びに行った際、子供が砂場で遊びに夢中になっていると、母親がそっとベンチに行って座ったりしています。親が近くにいないことに気づいた子供が、慌ててベンチのところに駆け寄り、しがみついて慰めてもらい、落ち着くとまたちょっと離れて遊びに戻ります。これはまさに、安全基地である母親をより所として外の世界を探索し、また戻るという行動の表れです。

おおむね3歳を過ぎると、現実に目の前にいなくても、その人のことをイメージの中で思い浮かべることができるようになります。目標修正的協調性とは、常に物理的に接近している状態を維持できなくても、相手の状況によって接近を調整することができるようになるということです。両親が喧嘩して怒ったお母さんがカバンを持って玄関から出ようとしたら、子供は必死でしがみついて離れまいとしますが、「ゴミを持ってちょっとゴミ出してくるから待っててね」と言えば、しばらく離れていても我慢して待っていることができるようになります。

3歳以降は、成人になっても基本的にこの状態が続きます。認知的接近とは、いつも物理的に接近していなくても、その人のことを思い浮かべたり、声を聞いたりすることで、その人の存在を身近に感じて安心感を得ることができるということです。悩みや不安があった時、電話で親の声を聞いたり、あるいは成人の場合は親でなくても大切な友人や恋人の声を聞くだけで、ホッとして、困難な状況にも取り組めるようになったりします。