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アタッチメント理論と多様な関係の影響(発達心理学特論第6回)♯放送大学講義録

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アタッチメント理論では、親子の特定の関係に焦点を当てています。ただし、人が育つのは親子といった閉じた関係の中だけではなく、実際には多様な人間関係の中で人の暮らしが支えられています。

この図は、人の発達を捉える際の2つのモデルを示したものです。モデルAは、乳幼児期の親との関係を土台として、児童期以降の親子以外の関係、特に同年齢の仲間との関係が作られていくというものです。モデルBは、発達の初期から親との関係と同時に同年齢の仲間との関係も作られ、両者が相互に影響を与えつつ人は発達していくというものです。アタッチメント理論はモデルAに該当します。漸成説(エピジェネシス)と言いますが、少しずつ人との関係が作られていくというものです。

アタッチメント理論は、ボウルビーが理論化した当初、モノトロピーを暗黙の前提としていました。モノトロピーの「モノ」とは「一つ」という意味です。アタッチメントの「指定席」が一つあり、そこに優先的な絆が作られ、そこで作られたアタッチメントの影響によって、その後の人間関係の発達が影響を受けるというものです。これが拡大解釈され、「母親剥奪理論」、つまり母親との関係が不適切な場合、その人の発達にネガティブな影響が大きくあるという見方に発展し、それに対する批判も出てきました。

子供の成長が特定の親との関係に大きく依存するという考えは、親に大きな負担をかけることになります。本当に特定の親との関係だけがその後の発達を決定するのでしょうか。実際、第2次大戦中にも、親を失った子供が互いに助け合いながら適応的な発達を遂げているケースが報告されていますし、私たちの今日の日常を考えても、親に全ての責任を負わせることが大きな問題となることも考えられます。