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アタッチメントと社会的ネットワーク(発達心理学特論第6回)♯放送大学講義録

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先ほどの図をもう一度見てみましょう。モデルBは、当初から親との関係だけでなく、仲間との関係も成立するとするものです。仲間に限定せずに人を取り巻く様々な人間関係を想定すれば、社会的ネットワークという人間関係の網の目によって、一人の人が支えられつつ育っていくと考えることができます。これが社会的ネットワークモデルです。

親と言っても、父親や母親だけでなく、祖父母や兄弟、近所の人間関係などの多様な関係性の中で人は育ちます。幼い子供であっても、身近な関係の中で人との関係を使い分けていることが知られています。日常のケアは母親、遊びは父親、甘えたい時には祖父母などです。

カーンとアントヌッチによって提唱されているコンボイモデルも社会的ネットワークモデルの一つと言えます。コンボイとは護衛艦という意味で、人の育ちを支え、人生という困難な航路を進む際に、その航行を守り、共に進んでいく護衛艦を周囲に持っていると考えるものです。最も身近なところで支える関係、中間的な関係、周辺的な関係の三重の円でモデル化していますが、実際にはもっと複雑な関係性の中で支えられているのが実態です。

アタッチメント理論に示されるような身近な人間関係の中で人が育つという視点は重要ですが、その特定の関係だけに依存することは、逆に人の成長にリスクをもたらすこともあります。家族やそれを取り巻くコミュニティの関係性が密で、様々なセーフティネットが機能していれば良いのですが、今日の虐待の問題などは、それが機能しにくくなっていることの表れでもあります。そうした意味で、社会的ネットワークの考えをもっと積極的に取り入れ、子供の育ちを支えるネットワークづくりが今日の課題だと言えます。