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早期の認知症診断と適切な心理検査が重要。情緒的サポートと初期支援を強調し、生活障害対策とアセスメントの重要性について解説。心理職の役割を紹介します。(保健医療心理学特論第8回)♯放送大学講義録

-----講義録始め------

 

このように早期に認知症を診断することは、治療可能な認知症を見逃さず、適切な薬物療法や非薬物療法を選択するために重要です。また、進行や経過の見通しを知ることで、本人と家族が今後の方針を決める上でも大切です。

これは、当センターの初期支援までの主な流れを示したものです。診断後の支援が重要なのは言うまでもありませんが、治療相談の際にすでに本人や家族に社会的困難があると判断された場合、受診前から個別的支援が始まります。診断後の支援で心理士に期待される役割について、専門医にお伺いしました。

「診断後の支援としては、知識的なサポートと情緒的なサポートの両方のバランスが大事だと思っています。認知症に関する知識を提供するとともに、その不安を家族同士、ご本人同士、あるいは専門職を交えて共有したり、癒し合う場を設けることが意味があると思います。」

今後の心理職の関わりについて、どのように考えているかをお伺いしました。

「まず、診断前の心理職の関わりとしては、心理検査の専門家としての役割が非常に大きいと思います。認知機能検査や神経心理検査をしっかり行うことで、医師が診断する前にどのような認知症かを予測し、大体当てることができます。診断後、あるいは診断中からも、心理職の強みは神経心理学的な検査と心理的な支援の両方です。認知機能障害を評価し、どのようなサポートが本人にとって最適かを一緒に考え、ご家族にアドバイスすることができます。また、認知症のご本人の不安や心配ごとに寄り添い、ご家族の悩みにも対応できる専門職としての役割が重要です。」

専門医のお話のように、適切な心理アセスメントを行い、予定管理や探し物などの生活障害に対して、環境の工夫やサポートに生かすことが求められます。これは心理士が作成したパンフレットです。受診時に本人や家族の困り事に応じて医師が説明に使用しています。

また、診断直後は診断された事実を受け止めきれない本人や家族も多く、情報的サポートと合わせて情緒的サポートを提供することも重要です。当センターで実施している支援プログラムには、診断後に同じ悩みを持つ仲間との交流の場として、本人対象の話し合いの会や家族対象の家族交流会があります。時にはユーモアを交えて苦労を語り合い、一緒に笑ったり、共に涙することもあります。経験を共有することで、自分の状況を相対化し、互いのサポートが自分を支える原動力となる人も少なくありません。本人や家族ともに、人生で培ってきた困難への対処法や強みを再確認する機会となる場合もあります。

専門の心理学者は、「どんなに年を取り病気になっても、人は希望を捨てず、心は自由に自分らしくありたいと願い、生きる意味を見出す支援が重要である」と述べています。心理士として、本人の状況に即した心理支援を行うことは、認知症の程度や病気の種類に関わらず重要です。