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認知症の特徴、総合アセスメント、BPSDの重要性を解説。アルツハイマー型認知症の各病期の課題を多職種連携で支援し、心理士の役割を紹介します。(保健医療心理学特論第8回)♯放送大学講義録

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まず、認知症の特徴と総合アセスメントについて見ていきましょう。認知症とは、脳に何らかの疾患が生じることで認知機能が障害され、それによって生活障害が生じる状態を指します。さらに、日常生活の失敗や不適切な環境やケアによって、不安や抑うつ、イライラや幻覚・妄想といった行動心理症状(BPSD)が生じることがあります。これにより介護が難しくなり、身体合併症が生じたり悪化したりします。これらが相互に影響し合うことで臨床像は複雑になります。その結果、社会的孤立、生活困窮、虐待、家族問題、近隣トラブルなどの社会的困難が生じ、本人と家族の生活の質が急速に悪化するのが認知症の本質的特徴と言われています。

心理士による認知症のアセスメントというと、認知機能の評価をイメージしやすいと思います。このつながりを適切に評価し、疾患の特徴に即して生活障害を補う工夫を検討することが重要です。それだけでなく、臨床像の複雑化が生じ得るため、これらすべてを総合的にアセスメントし、支援に生かす姿勢が求められます。なお、認知症の主な種類やアセスメントについては、印刷教材をご参照ください。

それでは、認知症の進行と各病期の課題について見てみましょう。これは認知症の半数以上を占めるアルツハイマー型認知症の経過を示したもので、今回はアルツハイマー型認知症を例に、初期、中期、後期、終末期の4つに分けて話を進めます。緑の線が認知機能、青がBPSD、赤が食事や行為、排泄といった日常生活動作(ADL)の変化を表しています。

認知機能は初期から終末期にかけて緩やかに低下していくのに対して、ADLは初期には保たれ、中期の後半から急速に低下します。BPSDは初期から不安や抑うつなどが見られ、ADLが低下する中期に最も強まり、終末期にかけて目立たなくなっていきます。このように、病期によって認知機能や生活機能、BPSDが変化し、それに伴って本人や家族が直面する課題も様々に変わります。そのため、支援に携わる上で各病期の課題を理解しておくことが非常に重要です。

さらに、家族機能や経済状態によって本人や家族が抱える社会的困難も多様であるため、様々な専門性を持った多職種で切れ目ない支援をしていくことが必要です。今回は、私が勤務する東京都健康長寿医療センターの多職種のインタビューを紹介しながら、認知症高齢者の支援における心理士の役割について理解を深めていきたいと思います。