確かに自分の心は自分でもよく分からないものなのかもしれない。真面目に心理学に挑んだことがないのが理由だろうか?
ティモシーウィルソンの「自分を知り、自分を変える」。題名から受けるのは?自己啓発本みたい。半分正解で半分不正解。自己啓発本として読めるが、最新の社会心理学の概説書としても読める。原書の題名は、私達自身にとっても見知らぬ人、というのが直訳。誰なのか、がメインテーマ。適応的無意識。自己、自分自身についての社会心理学的な問題。心理学を学ぶ動機。困っている人を助けたい、と並ぶのが、自分のことをもっとよく知りたい、というもの。心理学を学べばもっと自分のことが分かるのでは?ただこの本を読めば分かる、というものでもない。他者の心を分かる、というのと同じように幻想。自分のことでありながらまだまだ知らない、というメッセージ。見知らぬ人、は自分自身。何故人は自分自身を充分に知らないのか?どうやって自分自身を深めていくのか?殆どは1つ目の疑問に。無意識的な部分の本質とは?無意識。フロイト?主に2つのタイプの無意識。今この瞬間には意識化されていないが、容易に意識化出来る、というものだが、重要視されていない。心理的苦痛の源になっているので、抑圧されている思考や欲求。著者のウィルソンは、フロイトの解釈が広い影響を与えたので、狭い分野しか無意識の研究が出来なかったと。判断、感情、行動に影響を与える心の過程。適応的無意識。フロイトの考える無意識が負の作用をするのに対し。健やかに生きるための正の作用。架空の人物の登場。適応的無意識を持たない者。思考実験。Dはデカルトから。心の働きは全て意識化出来るものと考えた。どのような生活を送るだろうか?適応的無意識が無くなると、朝目が覚めても起き上がることが出来ない。感覚フィードバックを貰う。無意識の内に身体が調整される。自分がどのようにして歩いているのかは分からない。無意識的心の働きがあるから。言葉を理解するにも無意識的な働きが必要。言葉の意味を文脈を捉えながら理解することが出来る。無意識的な心の働きの一部に過ぎない。より高次の働きを担っている。情報を解釈し評価し、目標を設定したり。適応的、の言葉の意味。無意識的過程が心理的な。進化心理学。心の機能が進化の過程で生み出されたとする。進化論では地球上のあらゆる生物の特質が、環境に適応の過程で、自然選択されたもの。心の機能までもが進化の過程だったと考える。周辺の世界に適応するために自然選択されたもの。環境を即座に評価するなどの能力も、自然選択の過程から。五感はあらゆる情報を脳に送る。意識的に処理出来るのは40要素くらい。捌ききれない。奮闘しているのが無意識的過程。現代のジャンボ旅客機。かなりの部分を自動操縦、オートパイロットで。姿勢を安定させ飛行できる。自動操縦の機能が無意識的機能。より早くより多くの情報を効率的に処理できる。意識の外にしているのは、その方がより効率的に情報処理が出来るから。フロイトの無意識的過程を無視するのではないが。あくまで情報処理の効率性の為。膨大な情報の処理をするコンピュータ的側面とは違う面もある。適応的であるためには、周辺世界の情報を処理する必要がある。生存したり子孫を残したりするのに優位な面。毒のある食物は食べないようにしなければならない。適応的無意識による判断は、意識的なそれよりも正確。無意識的過程は幾つかの基準で処理。自己との関連性。大勢の人がパーティーで話を。遠くに人が自分の名前を呼ぶと、それに気がつくのはよくあること。無意識的な過程が膨大な情報の処理を。自己の情報が優先的に処理。アクセス可能性という基準。知識へのアクセス、接近のしやすさ。常に記憶内でアクセスがしやすい。アクセス可能性は自分との関連性だけで決まらない。最近触れた情報はアクセスしやすい。周りの世界にも適応される。朝のTVの情報など。個人差も在る。人によってアクセスしやすい情報は違う。どのような側面に着目するかは異なる。知性や人柄。持続的な傾向性を示すものも。優先順位に大きな影響を与える。良い気分基準。自分に最大の喜びを与えるように世界を見る。自分が良い気分になるような情報に着目したり、都合よく評価されたりする。称賛する声には反応し、批判は無視する。随分自分勝手?このような心理的免疫システムは合理的。身体的な免疫システムと同じ。適応的無意識は生活のあらゆる側面で役割を果たす。通常意識化することは出来ない。意識と乖離や矛盾が生じる。自分の思考や行動が意識的だと思う人は多いけれど。意識化されない心の働きも多い。さも意識的に思えているかもしれないが。大型スーパーに机を置き、4つのストッキングの内どれが品質が良いか?4つは同じ物だったが、右側の位置に置くものが上等だとされた。しかし位置に言及した人は一人も居なかった。ストッキングの品質が理由と思った。意識化することは難しく、しようとするとかえって的確な判断が出来なくなる。5種類の芸術品のポスターをもって帰ってもらう。吟味する人と直感的に選択した人と。意識的に分析することでかえって効用が妨げられてしまう。繰り返し意識的に考えることは、自滅的な思考パターンに陥ってしまう。あれこれと推測を働かせるよりも、新たな物語を描いた方が合理的。「オープリングアップ」。書く、という行為は出来事に意味を見出すため。心理療法家の力を借りて、もっとよい自己の物語を描くプロセス。無意識的過程での選択と乖離があってはいけない。内省をするだけでは乖離を防ぐのは難しい。外部情報に頼ること。心理学に関する知識。身体のことをよく知ろうとして医学書を読むが、心を知りたければ心理学書を読むのが役に立つ。しかしあくまで平均像。その人自身には限界が。他者の目を利用することも重要。他者の認識の方がより正確な場合があるから。無口だと言いながら全く違う他者も居る。鏡の中の自分を見るのは有効。自分自身で観察する努力が必要。自分については自分しか分からない内部情報を基に理解していると思っている。自己理解と他者理解は本質的に同じ。自己知覚理論。自分はこんなことをする人間だったんだ、と理解する。第三者の視点で観察するのも効果的。自分のことをよりよく知ることが出来て、理想の自己像と違う場合は?まずは行動を変えること。理想の自分の行動をすること。実践するスキルを身につけることが出来る。繰り返すと習慣化して、無意識にできるようになる。行動に基づいた自分の物語を作ることが出来る。自分について考えすぎる代わりに、自分の行動を変えようとすること。
面白いところ。自己啓発というテーマを利用しながらも、社会心理学の最新の知見を紹介していること。多くの実証研究も取り上げられているので、とても説得力がある。グラッドウェルの著書も。知識が体系化され整理出来た。一読された後、各々の研究の読み直しを。最初に良いと思ったものでなく違うものを選んで、後悔することもある。適応的無意識の働き。研究ではどのように検討している?ウィルソンの適応的無意識は抑圧されたものではない。意識と無意識は常に乖離しているのではない。適応的無意識を測定する多くの技法も開発されている。その人の知識や体験を測ることが出来る。バイアスなどを基に探る方法もある。ポジティブイリュージョン。自分に都合が良い方向に歪めて受け止める。バイアスやエラーを丹念に調べることで、どのような適応的無意識を持っているかが分かる。意識的な判断は良い結果を導かない。しかし特に大きな失敗をシてしまった場合は、理由を考えることも良さそうだが。無意識的過程に全てを委ねるのも良いし、意識的選択の方が良い場合もある。情報に基づく直感。直感に基づく判断。専門家の直感というものは凄い。「第一感」。専門家は「何かがオカシイ」。当初は直感を疑う証拠ばかりだったが。むしろ意識的な方が良い判断が出来るかもしれない。経験や意識に基づく直感が必要。理由分析も必要。特に人生に重要な経験の場合は。ただ直感で判断するのはリスクを伴う。